第6話

* * *


営業部のドアを締め、高森から受け取った書類を胸に抱え詰めていた息を吐く。



(うう…頭痛い…)



比較的静かな経理部にデスクを置く夢にとって、営業部の喧騒は結構なストレスだった。



危惧していた高森は電話に掛かっていて目を合わせただけだったが、それでも片手で夢の手を握ってウインクしてきた。



夢は相変わらず何を考えているのか分からない高森を、改めて苦手だなぁと思いながら歩き出した。



その時。



(……!)



夢は思わず足を止める。



(なに…この、声…)



どこからか聞こえる、人の声。



遠くにいても感じる、これは、「いい声」。



二人分の男性の声が近づいてくる…けど片方の人の声だけが夢に突き抜けてくる。



本能的に胸がときめいて、足が動かない。



夢は耳がいいと同時に、「声フェチ」なのだ。

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