第5話

「わかりました、今行きます。」



受話器を静かに戻し、また小さく息を吐く。



(直接あの声を聞くの…きついんだけどなぁ…)



夢はへの字になった唇をきゅっと引き締めると席を立った。



営業部は10階にあり、経理部は13階にある。



一度上に上がってからエントランスに降りるのは、エレベーターを待つのもかかるし、忙しい営業マンの時間を無駄にしてしまうので、夢が出向くことにはなんら問題はなかった。



ただ…



エレベーターからフロアに降り、営業部のドアを開けた瞬間「う」と夢は思わず声を漏らした。



凄まじい数の声。けたたましい電話の音。ひっきりなしに誰かが喋り、罵声や笑い声が飛び交う。



もはや魚市場のような活気に目眩を起こしそうになりながら、夢は辺りを見回して高森を探した。

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