第4話

「高森さん、お疲れさまです」



「おつかれぇい。ね、小野寺さん今夜空いてる?」



「…からかわないでください。用件はそれだけですか?」



いつもの冗談に、つい嫌悪感を露にしてしまった。



夢が高森を苦手に思うのは、実は彼の話し方や態度が原因ではない。



その、声だ。



「冗談冗談。切らないでー!俺そっちに回す書類あるんだけどさ、これから営業出なきゃだから悪いんだけど取りに来てくれない?」



煙草と喋りすぎで掠れた声で矢継ぎ早に話されると、軽い頭痛がした。



夢は耳がいい。幼少期から人より少し音に敏感で、特に人の声に反応してしまう。



そんな夢にとって高森の声は丸めたアルミホイルを奥歯で噛むような、不快な音に聞こえていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る