第八話 僕の足が自然と……
僕は立ち尽くすように、木の下に立つ女性を見つめる。
気づくと、僕の鼓動は高鳴っていた。
こんなに鼓動が高鳴るのは、あの子と出会って以来だった。
女性は正面を見据えたまま、こちらへ視線を向けようとしない。
僕に気付いていないのか。
それとも。
僕があれこれ考えていると、女性は左手首に巻いた腕時計へ目を配る。時間を確認してすぐ、女性は再び正面を見据える。
女性のその姿はまるで、誰かを待っているようだった。
誰を待っているのだろうと、僕は考える。
すると、女性は右手に携えるペットボトルのようなものを見つめる。
その瞬間、僕の目に見覚えのあるデザインが映る。
それは。
「あのホットミルクティーの……」
僕が言葉を漏らしてからすぐ、女性はペットボトルを両手で包み込むように持つと胸元に寄せる。
そして一瞬だけ顔を俯けた後、再び正面を見据える。
次の瞬間、僕の足が自然と動きだす。
理由は僕にも分からない。
僕の足はゆっくりと前に進んでいく。
太陽に照らされ鮮やかな色彩を放つ、緑の下に……。
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