第七話 右手にペットボトルのようなものを携えて……

 七月最初の日曜日。


 僕はコンビニエンスストアで買い物を済ませると、あてもなく歩みを進める。


 特に予定もない。


 どこに行こうか。



 あれこれ考えていると、僕の足は無意識のうちにあの場所へ向かっていた。



「いつの間に……」



 僕の視線の先には、あの公園の砂場が映る。


 入口前まで歩を進めると、楽しそうにブランコを漕いでいる五歳くらいの二人の少女の姿が僕の目に飛び込んだ。


 ざっと見渡すと、公園内で遊んでいるのはブランコで遊んでいる少女、二人だけだった。


 

「日曜日は、もっといるんだけどな……」



 この日は、公園で遊ぶ子どもが少ない。


 暑さのせいだろうかと考えながら、公園内へ足を踏み入れる。そして改めて、公園内を見渡す。


 すると。



「あれ……」



 ある場所が僕の目に映った瞬間、僕の心にドキッとした感覚が走る。

 

 僕の目に映ったのはもう一つの入口から公園内に足を踏み入れた、僕と同年代と思われる、見覚えのある一人の女性の姿だった。


 その女性は公園の木の下に赴く。そして木に背中を向けると両手をお腹の辺りで組み、正面を見据える。



 右手にペットボトルのようなものを携えて……。

 

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