第六話 胸騒ぎのようなもの

 六月下旬の火曜日、午後五時四十七分。


 僕は仕事終わりに、コンビニエンスストアへ立ち寄り、お弁当をかごへ入れた。



「あとは……」



 僕の視線は無意識に、ホットドリンクコーナーへと向いていた。すると、僕の足が自然と動く。気付くと、ホットドリンクコーナーの前に立っていた。


 

「意識してたわけじゃないのに……まあ、いいか」



 ぼくはどれにしようかと、視線を左から右へと移す。


 すると二段目、右端に陳列されているホットドリンクに目が留まった。


 

「あれ……」



 僕の右手が自然と伸びる。気づくと、温かい感覚が僕の右掌に広がっていた。


 視線の先には、あのホットミルクティーの商品名が映る。


 しかし、ラベルは別デザインだった。


 

「リニューアルしたのかな……」



 棚へ視線を戻すと、僕が右手に持つホットミルクティーはない。


 ホットミルクティーが陳列されていた位置の左隣には、ペットボトルのホットココアが一本、置かれていた。


 ホットココアのラベルが目に映った瞬間、僕の心を胸騒ぎのようなものが走る。


 この正体は一体、なんだろう……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る