第四話 視線

「ありがとうございました」



 ホットミルクティーの温もりを左掌に感じながら、僕はコンビニエンスストアを出て、傘を差す。


 傘の小間を叩く音がコンビニエンスストアへ入る前よりも大きくなっている気がした。


 僕の視線は傘の受け骨へ。


 

「雨脚はそんなに変わってないはずなんだけどな……」



 僕は一つ息をつくと、水たまりをけながら、雨が降りしきる街を進んでいく。


 

「どこ行こうかな……」



 そう呟くと、目の前には信号機。丁度、青信号に切り替わったところだった。僕は横断歩道を渡る。


 渡り切ると、右へ曲がり、そのまま進んでいく。


 その先には。



「あれ……ここ……」



 僕はとある公園へ辿り着いた。


 そこは、思い出の公園。


 二年前まで交際していた恋人との待ち合わせ場所だ。


 意識していたわけではない。



「なんでだろ……」



 そう呟くと、僕の足は自然と公園内へ。すると、公園内の大きな木の前に一人の人物が。


 

「あれ、あの服……」



 僕はその人物の服装で何かを察する。



「もしかして……」



 僕の右足が動くと同時に、その人物はその場から離れる。


 それからすぐ、その人物が一瞬だけこちらへ視線を向けた。その瞬間、僕の口が無意識に開く。



「あの女性……」



 僕の目に映ったのは、僕へ何かを語りかけるような視線を向ける、ある人物によく似た女性の表情だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る