第2話
東京、渋谷にある大手放送局、テレビ富士、通称テレフジ。
多くの大手放送局が乱立する地デジの中の最高峰と言われる、テレビ界の絶対王者。
親会社であり設立者の「富士ヶ丘財閥」の支配下にある。
富士ヶ丘財閥が群を抜いているのは、何もテレビだけでは無い。
超人気月刊誌「フジロード」の発行、認可保育園「フジスクール」の運営、ミシュランの三つ星レストランが入っているホテル「グラン・メゾン・フジ」の運営、国内最大級の超大型デパート「渋谷24(渋谷フジ)」の運営、その他にも様々な職種に躊躇なく挑んでいる。そして、そのほとんどの事業に成功しているのだ。
それを世界中が評価し、富士ヶ丘財閥の会長、
本番前に緊張して静まり返るスタジオ。空気が張り詰めているのが目に見えて分かる。この番組はテレビ富士の花形「月9」と「News Fuji」と並ぶ大人気番組、「パラダイストーク」である。
超大御所芸人の
「最後、沢城花奈さん、入りまーす」
「「「よろしくおねがいしまーす」」」
赤い口紅が印象的な女性がいた。
高さ5センチ程の真っ白なヒールに、真っ白いワンピース。
決して華やかとは言い難いような服装なのに、不思議と目を惹きつける。
MCの和正賢治やゲスト、スタッフまでもが息を呑んで彼女を見つめる。
カツン、カツン、とヒールが床を鳴らす音だけがスタジオに響く。
彼女はあたりを見回して、「よろしくお願いします」と微笑んだ。
赤い口紅の面積が広がる。
彼女の姿勢は地面に対して直角。
目はぱっちりとしていて、綺麗な二重と涙袋がそれを際立たせる。
鼻は通っていて、それでいて非常に小さい。
そして、彼女の顔のパーツのひとつひとつが奏でる黄金比。
隣にどれだけ美しい女性を置いても、見劣りしてしまうだろう。
どこか妖艶で、それでいてあどけない。
スタジオ内の時間だけが止まった瞬間であった。
数分後。
「スタートまで!3、2、1…。」
「さぁ!始まりました、和正賢治の!パラダイス!トーーーク!今日のスペシャルゲストは、女優の沢城花奈さんです!!」
「…い」
「…い!」
…電球の光がまぶしい。
「起きてくださいったら!」
「ん…?」
起きた先に広がっていたのは、一面に広がるコンクリートの床と壁であった。
窓は無い。
そこにあるのは、天井にいくつも連なる小さな電球達だけであった。
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