一緒にお風呂入る?
「えっ!どうして?」
「俺急に呼び出されて、昨夜深夜番だったんですよ。
夜中に仁科さんが来て、キャットフードとか猫砂飼ってたんで」
「俺?何時頃来てた?」
「夜中の12時頃ですかねー。
ジャージの上下でラフな感じで。
でも、相当酔ってましたよ」
俺は、昨夜泥酔して記憶も飛ばした状態で、一度着替えてここに買い物に来ていたのか?
自分がさらに恐ろしくなった。
もう、酒は程々にしよう。
「俺、何も覚えてないわ」
「じゃあ、これも覚えてないんですか?
返しましょうか?」
そう言って、木村くんが取り出した四角く小さな包みは、コンドームだった。
「コンドーム買ってる仁科さんに、俺ついつい出過ぎたこと言っちゃってー」
「えっ!なんて?」
「新しい彼女できたんですかって…」
推し黙る俺に、謝る木村くん。
「いいよ!そんな事気にするなよ。
で、なんで俺、木村くんにコンドームあげたの?」
「男たるものポケットにはコンドームだとか言って、その場で開封して俺のポケットに押し込んだんです。
えー!全く覚えてないんですか?」
「覚えてないわ」
「ノンアルコールビールは正解ですね。
お酒は程々に」
と言いながら、俺にコンドームの包みを返そうとする木村くんに、
「一度渡した物は返していらない。
その代わり、俺がせっかくあげたんだから、使えよ」
そう言って、コンビニを出た。
俺は少し安堵した。
記憶もなく見知らぬ誰かを抱いたわけではなかったことに。
そうして、家に帰り玄関から部屋中を見回した。
彼女の姿は、もうそこにはなかった。
勝手に帰っていったんだな。
そう勝手に確信して、少しホッとした。
それも束の間、彼女は俺のベッドの中からスルリと出てきた。
「なんだ、まだいたのかよ!」
何度か玄関を開けて、
「帰らなくて大丈夫なのか?」
と言っても、出ていく気配はない。
しょうがない。
もう一晩泊めてやろう。
一緒にご飯を食べ、ソファに座ってテレビを見た。
すると、彼女の白い足が少し汚れていることに気付いた。
深い意味もなく、
「一緒にお風呂入る?」
と言って、バスタブに久々お湯を張った。
彼女はついてきた。
彼女の身体に泡をつけて優しく洗ってやった。
抵抗もしない。
「君は、男の人とお風呂に入ることに抵抗はないのか?」
お腹の上に泡をつけていた時、小さな突起物に触れてしまった。
乳首だ。
入念に泡を付けると、彼女はいたずらっぽい顔をして、俺の手を甘噛してきた。
その仕草が可愛くて、何度も同じところを洗っていたら、本気で怒られ手の甲に穴をあけられた。
濡れた体をタオルで拭き、さらにドライヤーもかけてやった。
風呂上がりにノンアルコールビールを飲みながら、鶏軟骨唐揚げを時折口に運ぶ。
それに、断りもなく手を出してくる彼女。
一個取られた。
でも、口に合わなかったのか、ぺっと口から出した。
その夜、ソファに毛布を用意してやった。
彼女は、そこで眠ってしまった。
俺はベッドに横になり、忘れようとしていた元カノの事を考えていた。
家族や木村くんに蒸し返されて、思い出してしまった元カノとの別れ。
こんな時はなかなか寝付けない。
そんな時に、彼女がトイレに立った。
そして、水を飲んでいる。
その様子をしばらく眺めているうちに、俺は眠ってしまったらしい。
朝方、彼女が俺のベッドにスルリと潜り込んできた。
大人しく眠ってしまった。
その生温かさに、久しぶりの幸福感を感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます