第35話

「少し長くなるよ」


「うん,聞く」




それは8年前のこと。この時の千夏と香は7歳。



その日は、香の誕生日だった。

家で母や知り合いが様々な料理を作り、バイキング形式でダイニングを広くして並べていた。そしてたくさんの来客もいた。



「ね、千夏」


「なあに?香」


「千夏は、アーモンド、食べちゃダメだからね」


「アーモンド?」


「うん、まあ僕がそばにいるから大丈夫だけどね」


「うん、わかった」



「香、みんな名前で挨拶をしようか」


「あ、うん。千夏、この人の言う箏,聞いて待っていて」



そう。この人というとは誠さん。



「アーモンド、食べさせないでね、誠さん」


「わかった。挨拶頑張ってな、香くん」



「さ、これ、美味しいよ」


「これは?」


「チョコレートだよ」


「チョコ?」


「そう、甘くて美味しいチョコレート。さ、口を開けてごらん」


「あー」



そうして口の中いっぱいに入れられたのは、アーモンド入りチョコレート。このチョコはひと粒のアーモンドが入っているのではなく、かけらが散りばめられているようなものだった。そして、1つを口にした瞬間。千夏にとっては生き地獄。



「んん!ぁあ。いや!いや!かゆい!痛い!いや!!」



前の方で挨拶をしていた香は勢いよく私のところに来た。

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