第12話 幼馴染と街でのデート

勇者パーティを去り、戦闘を共にするようになってから、アレンとマリアは互いに支え合いながら成長してきた。


今日はそんな二人にとって、街での『デート』という貴重な時間だった。


もともと騎士道を重んじる2人は、異性との交際には厳格なルールがあり、騎士としての誓いを大切にしてきた。


特に、異性との交際については慎重に考えてきた背景があり、デートという行動がどこかぎこちなく、互いに少し緊張した雰囲気が漂っていた。


「アレン、あの店を見て!魔法雑貨がたくさんあるみたい!」


マリアが嬉しそうに指さしたのは、カラフルな瓶や不思議な形の石が並べられた魔法雑貨店だった。


アレンは微笑みながら、マリアの隣に立ち、その独特の品揃えに目を見張った。


「本当だ、どれも見たことないものばかりだな。マリア、何か欲しいものがあったら遠慮なく言ってくれ」


アレンのその言葉に、マリアは少し顔を赤らめながらも嬉しそうに微笑んだ。


アレンが自分のために何かを買おうとしてくれるのが新鮮で、心が少し弾むのを感じた。


二人は店内を見て回りながら、魔法の香油や治癒のポーション、小さな護符などを手に取ってみたり、店主の話に耳を傾けたりしていた。


次第に緊張もほぐれ、魔法雑貨店を後にした二人は、アイテム屋にも立ち寄って買い物を楽しんだ。


「アレン、このポーション、面白いわね。色が変わるなんて……飲んだら何が起こるのかしら?」


「さあな。試してみたい気もするが、慎重に扱った方が良さそうだな」


そんなやり取りをしながら、二人の笑顔はますます明るくなり、自然と手が触れ合うことも増えていった。


2人にとって、買い物を楽しむというのは冒険とは違う楽しさがあり、何気ないひとときを共有できることに心が温かくなった。


一通りの買い物を終えた後、二人は人気のカフェに足を運んだ。


カフェは落ち着いた雰囲気で、木製の家具やシックなインテリアが心地よい空間を演出していた。


メニューを見ると、どれも美味しそうな飲み物が並んでおり、目移りするようだった。


「うーん、どれも美味しそうだな。アレン、何かおすすめある?」


「うーん……じゃあ、ここにある特別な飲み物セットなんてどうだ?お互いに頼んでみよう」


アレンがメニューから『フローラル・ラテセット』、そして『ベリーベリースムージーセット』を選ぶと、マリアも嬉しそうに頷き、特別な飲み物を二人で楽しむことにした。


運ばれてきたドリンクは、フローラル・ラテが淡いピンクの花びらを浮かべた美しいラテで、ベリーベリースムージーは鮮やかな赤い果実がたっぷりと入った甘酸っぱいスムージーだった。


「わあ、綺麗……まるで花のようなラテね」


「本当に。これが街で話題になるわけだ。いただきます!」


二人はそれぞれの飲み物を味わい、カフェでのひとときを楽しんだ。


フローラル・ラテのほんのり甘い香りと、ベリーベリースムージーの酸味が混ざり合い、温かな気持ちが体に染み込んでいくようだった。


飲み物がひと段落ついた後、二人はカフェでデザートも注文した。


アレンは『ミントベリーケーキ』、マリアは『フルーツパフェ』を頼んだ。


二人でゆっくりとデザートを楽しみ、互いに微笑みを交わし合う。


「アレン、このパフェ、とっても美味しいわよ。食べてみる?」


マリアがスプーンでパフェをすくい、アレンの口元に差し出す。


その光景に、アレンは少し照れながらも受け入れ、間接キスになることを意識しながら一口を口に入れた。


「うん、美味しい!甘さと酸味がちょうどいいな」


アレンは喜び、次に自分のミントベリーケーキをスプーンで取り、マリアに差し出す。


「マリア、これも食べてみてくれ。どうだ?」


マリアも微笑みながら口を開け、アレンが差し出したケーキを美味しそうに食べる。


二人は自然と顔を赤らめ、甘い時間がゆっくりと流れていった。


この何気ない『間接キス』で、アレンの中に少しだけ経験値が蓄積されるのを感じた。


レベルアップとはいかないまでも、マリアとの絆が深まるたびに、アレンの力が少しずつ増しているようだった。


「アレン、また少し強くなったかもね」


「そうかもしれないな。マリアのおかげで、俺も毎日が楽しいし、成長できる気がするよ」


マリアは嬉しそうに微笑み、アレンの手を握った。


二人はそのままカフェを出て、これからも共に歩む旅に向けて、強い絆を感じながら街を後にした。

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