第11話 勇者パーティに降りかかる試練

一方、勇者パーティの方では。


アレンを追放してからしばらくが経ったが、イリスたちはこれまで以上に厳しい現実に直面していた。


モンスター討伐の失敗が続き、成果を出せずにいる中、戦力の見直しや新たな戦略を練るために、王国の外には出ないようにしていた。


だが、思うような成果は出せず、パーティの士気は下がる一方だった。


「ふぅ……みんな、今日は少し休んで気分転換をしない?」


リーダーであるイリスが提案すると、聖剣士のリリアや魔法使いのフィオナ、弓使いのエルナも黙って頷いた。


たまには、何も考えずに買い物でもして気分を切り替えたい──そんな思いで、イリスたちは王都の市場へと足を運んだ。


だが、街中でのイリスたちへの視線は、冷たく鋭いものだった。


周りの人々は小声で囁き合い、時折、険しい表情でイリスたちを睨んでいた。


その視線が次第に背中に突き刺さるようで、イリスたちの気分も次第に沈んでいった。


「……なんで、アレンさんを追放したの?」


市場で買い物をしていると、ふと周囲の声が耳に入った。


その言葉には疑念や不満が感じられ、パーティのメンバーは肩を落とす。


イリスたちが通り過ぎる度に、周りの人々は小声で話し合い、冷ややかな視線を向けていた。


「まるで私たちが悪者みたいね……」


リリアが小声で呟くと、フィオナが軽く肩に手を置き、慰めるように言った。


「仕方ないわ。アレンが王国でも有名だったから、みんなの期待を裏切る形になってしまったのかもしれない」


そうは言っても、その冷たい視線がイリスたちの心に深く突き刺さっていることは明白だった。


買い物を終えたイリスたちは、居心地の悪さから逃げるようにして市場を後にし、静かな場所で昼食を取ることにした。


やがて、イリスたちは王都の小さな公園に辿り着いた。


公園のベンチに腰掛け、持参したお弁当を広げて食べ始める。


だが、ようやく落ち着きを取り戻したかと思った瞬間、子供たちがこちらに近づいてきた。


「裏切り者の勇者たちだ!」


突然、子供たちが叫び声を上げ、パーティのメンバーに向かって小石やゴミを投げ始めた。


子供たちの行動に驚いたイリスたちは、反応が遅れ、イリスが石に頭を直撃されてしまった。


「痛っ……!」


イリスが頭を押さえ、痛みに顔を歪める。


頭からは血がにじみ出し、彼女の手に赤く染まっていた。


周りにいたリリアとフィオナが慌てて駆け寄り、イリスの傷を確認する。


「イリス、大丈夫!?すぐに治療するから……」


フィオナが治癒魔法を唱えようとするが、その様子を見た子供たちはさらに声を上げて罵声を浴びせ始めた。


「アレンさんを追い出した悪い人たちだ!」


「役立たずの勇者なんか、いらないんだ!」


無邪気な子供たちの言葉が、鋭い刃となってイリスたちの心に突き刺さる。


イリスたちはその言葉に反論することもできず、ただ黙って耳を傾けるしかなかった。


イリスは、頭に滲んだ血を見つめながら、やり場のない悔しさが込み上げてきた。


小石を投げつけられた痛みよりも、心に深く刺さった言葉がイリスを傷つけていた。


「私たちは……悪くないのに……」


イリスの瞳に涙が溢れ出す。


イリスは自分が追放を主導した立場ではあったが、アレンの力がどれだけ頼りになるものだったかは痛感していた。


周囲の期待に応えられず、逆に失望を与えてしまったことへの申し訳なさと、アレンへの複雑な思いがイリスの胸に重くのしかかっていた。


「イリス……泣かないで。私たちは、私たちなりに戦っているわ……」


リリアがイリスの肩に手を置き、慰めるように語りかけたが、その言葉も虚しく響いた。


フィオナもまた、言葉を失い、ただ沈黙するしかなかった。


イリスたちは強い信念でアレンを追放し、自分たちの道を選んだはずだった。


しかし、その道がどれほど厳しく、孤独なものになるのかを思い知らされていた。


「私たち……どうしたらいいの……?」


イリスが小さく呟き、仲間たちを見渡す。


今まで自信を持って選んできたはずの道が、まるで暗闇に包まれているかのように感じられた。

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