第2話 追放された愛の剣士

アレンは驚いた。


イリスの言葉には、明らかに誤解と、アレンのスキルへの強い不信感が含まれていた。


アレンは慌てて否定する。


「違うんだ、イリス! このスキルは使わなければ問題ないんだよ。実際にいやらしいことはしないさ。約束する!」


「でも今はそのスキル、使おうと思えば使えるんでしょ? 女性である私たちに体を求めるスキルなんて、信じられない!」


イリスが怒りを込めて言い放つと、他のメンバーも


「確かにそうだわ」

「気持ち悪い」

「セクハラ」

「職業名が『愛の剣士』っていうのも、なんかいやらしいよね」


と次々に賛同する。


イリスは続けて


「アレンが私たちより強いのって、実はそのスキルを既に使っていて、私たちの体をそういう目で見てたからじゃないの?」


(う、もしかして、そうかも……)


とアレンは心の中で思い、うっかり顔に出てしまった。


「ほら、やっぱり」


イリスが呆れたように言う。


勇者パーティの女性陣は、それぞれ肌の露出の高い戦闘服を着ており、アレンが知らず知らずのうちにそういう目で見てしまったのは否めない。


アレンは困惑し、戸惑いながらも言い返してしまった。


「だったら、お前たちもそんな露出の高い服なんかやめて、もっと控えめな服を着ればいいだろ!」


イリスは冷ややかな目でアレンを見つめた。


「なに? それって私たちが悪いって言いたいの?」


イリスは続けて


「もういいわ、アレン。あなたがどれだけ強くても、このパーティには必要ないのよ。私たちの絆をこんな形で利用しようとするスキルの所有者を仲間として受け入れるわけにはいかない。あなたのスキルは、私たちには重すぎる。そのスキル名、私たちにも見えるんだから、確かにセクハラよ!」


イリスの宣告に、他のメンバーも同意の意を表す。リリアが軽くうなずき、セリーナ、フィオナは目を伏せていた。誰もアレンの肩を持とうとはしなかった。


アレンは


「そ、そんな……見せたくて見せているんじゃないよ。じゃあ、俺は、どうすればいい?」

「追放よ」

「え? 追放?」

「当たり前じゃない」

「そ、そんな……」

「早く出てってよ、変態」

「……」


アレンは静かに立ち上がり、自分の剣を手に取る。そして、これまで仲間として共に戦ってきた彼らと別れる覚悟を決めた。


アレンは勇者パーティを追放された。


胸には深い悲しみと、アレンのスキルが愛と誤解によって破壊されたことへの無念が渦巻いていた。だが、追放されたことにより、アレンは己の力で新たな道を切り開く決意を固める。


「スキル『性行為』……これが俺の道を閉ざすなら、俺自身で道を切り拓くしかないんだ」


そうして、アレンは、己の力を求めて新たな冒険へと旅立つのだった。

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