第10話 対決! その1

 竹内が指定された山頂へと近づく。


 そこも火山のようだった。周辺の山も同様で、今すぐ噴火することはないのだろうが、噴火や土石流などの影響で木々が生えていない思われる領域が多くみられる。


 そんな、目立つ位置にサルトゥスが3機、待機していた。


『おーい! 竹内さーん! こっち、こっち!』


 のんきな菅野の無線が入り、一機のサルトゥスが竹内に向けて手を振ってくる。

 菅野の緊張感のなさに、竹内はちょっと驚いてしまう。

 だが、なんだか笑みがこぼれてしまうのだ。


「こちらでも、小隊を確認した」


 竹内はジャンプ中の三号機の左手を上げ、小隊の位置が確認できたことを知らせてやる。


『半裸で、鉄骨と電気回線ムキムキのブロッコリー、カッコいいです!』


 菅野が意味の分からないことを言う。

 さすがに、そこまではついて行けないと竹内は思う。

 そして、何回かのジャンプを繰り返し、三号機は小隊に合流した。


「三号機、合流します」

『ご苦労。早速だが、機体の通信の接続状況を確認してくれ。各機体の情報は全て共有するように。分かったね』

「はい、了解です」


 竹内は回線の常時接続を確認した。

 既に小隊の行動情報が三号機に流れ込んでいるようだった。人間にはわからない領域だが、行動情報など取り込まれ、さらにサルトゥスの『動き』にも影響してくるはずだ。


『さぁ、これでメンバーがそろったわけだ』


 小隊長の井上が、竹内たちを前にミッションの説明に入る。


『知ってのとおり、ドラゴンが探査船プローブに向けて移動している。最終的に何を目指すのかは分からない。ただ、母船の軌道上での観察でわかったように、ドラゴンは希少種だ。そうであれば、見つかった個体が、先日、攻撃した個体である可能性は少なくない。そのため、今度、我々のような「機械」を発見した際、敵として行動することが予測される。探査船が「敵」として攻撃されれば、戦闘を想定していない探査船では装甲に穴が開き、壊され、我々は軌道上に戻れないかもしれない。また、何らの情報を持ち帰れないとするなら、我々のミッションは失敗と言うことになる。このような事態は避けねばならない。

 そこで、今回のミッションだ。ドラゴンの注意を引き、探査船に近づけさせるな。そして、可能であれば始末しろ』


『よろしですか』


 二号機に乗る斉藤が発言する。


『我々の機関銃も、竹内が持ってきたミサイルもドラゴンには通用しません。ということは――』

『そうだ。我々の火力ではドラゴンには勝てない』

『つまり、この身を「おとり」として、“さらせ”ということですか』

『――――すまない。そう言うことになる』


 サルトゥスの各コックピットのパイロットに、ため息が漏れる。

 地球を旅立つときには想定しえなかった、過酷なミッションだ。


『何を言っているんですか! 大丈夫に決まってるじゃないですか! この惑星に閉じ込められたドラゴンと、広大な宇宙を飛び越えて自由に飛び回る私たちと、どちらが上かは、明白です!』


 菅野が元気よく返してくる。


「そうですよ! ここまで来た以上、やってやりましょうよ!」


 竹内も訳が分からないままに加勢する。

 とにかく、勢いをつけてやるしかないと思ったのだ。


『……そうだな。我々の底力を見せつけてやろうぜ!』

『『「おう!」』』


 小隊がまとまった気がした。


『さて、作戦だが、まず、竹内。お前は外れろ』

『はい?』


 せっかくの気持ちが肩透かしを食らう。


『そりゃそうだ。当たらないミサイルなんて、邪魔なだけだもんな』


 二号機の斉藤が笑う。


『適当な山の山頂付近に移動し、戦場全体を俯瞰して見ろ。そして、必要に応じて情報を送れ。戦場では適材適所だ。分かったな』


 所詮、整備士。

 戦闘員とは違うのだ。


「――はい、了解」

『それから、一号機と二号機は、アルファ地点の火山の麓、少し平らになった所で待機する。そして、菅野。お前はアルファ地点の火山のすり鉢状になった内側に隠れ、ドラゴンを撃て』

『そういう重要な役は、小隊長か斉藤さんで――』

『私の命令もきかずに、ミサイルをブッ放したヤツがよく言うな。制御の効かないヤツのことは知らん』

『バレてましたか……』

『当たり前だ! 菅野、とにかく、お前のタイミングでこのミッションは始める。いいな』

『……はい』

『まず、菅野が飛んでくるドラゴンを撃ち、我々の待つ平原に落とす。そして、一号機、二号機で攻撃を加える。可能であれば、四号機、菅野も加われ。それから、無線は常時接続。情報を共有しろ。わかったな』

『『「はい!」』』


 作戦指示が終わったところで、小隊長が一息つく。


『ここからが大切だ。よく聞け。

 ――我々はドラゴンを倒すことはできないだろう。だが、それは敗北を意味しない。先のとおり、目的はドラゴンの注意を引き、行動を変えさせることだ。倒せないのであれば、各機、ドラゴンの注意を引きながら散開。とにかく、ドラゴンを探査船から遠ざけろ。そうすれば、探査船は生き残り、我々は軌道上へと帰れる。きっと、策はある。リベンジすればいいだけの話なんだ。

 しかし、未開の森林の中で「人」を探すのは難しい。だから、ある程度の大きさのあるサルトゥスの機体と共に、生きろ! いいな!』

『『「はい!」』』

『それでは、各自配置につけ!』

『『「はい!」』』


 小隊長の指示に従い、各サルトゥスは、指定された配置に向かった。

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