プロジェクト・ドラゴンスレイヤー  ~国立研究開発法人 宇宙資源調査・開発機構の調査ファイル~

三原 耀

第1話 接触

『こちら、一号機、定時報告を行う。アルファ地点に到着し、約52分。これまでのところ、ターゲットの確認なし。先の報告のとおり、アルファ地点は周囲で一番高い山になっており、レーダー、目視、共に、現在に至るまで良好。ターゲットの確認に障害なし。繰り返す。アルファ地点に到着し――。いや、レーダーに反応あり。この反応は――、ターゲットの可能性あり。報告を終了し、確認後、再度、報告を行う。以上。――――二号機、レーダーの反応はどうか』


『こちら、二号機。こちらでもレーダーに機影を確認した。――機影っていうか……、これ、マジっすか。この反応の強さなら、主要部分は10m程度ってところでしょうか。なら、普通の鳥はないでしょうから……、まさか、ここで戦闘機ってわけないっすよね』


『どこの国の所属だよ。ありえん』


『こちらに一直線で来ますよ。どうしますか』


『相手も、こちらが何だかわからんだろう。動かなければ反応はしないはず。相手から見れば、一号機と二号機は正面だ。少し山を下りて、木に隠れてやり過ごそう』


『了解』


『三号機、聞こえるか?』


『はい』


『そちらは、ちょうどターゲットが抜けて、後ろ側から狙える。適当な場所に移動してスティンガー・R人型ロボット用携帯式防空ミサイルシステムを構えろ』


『はい。――でも、やっぱり、無理なんでしょうね?』


『設定を変更していない以上、私もそう思うな。だが、それを確認し、今後の設定修正に生かすのも仕事のうちだ。――まっすぐに来るぞ。三号機準備はいいか?』





『――――――――はい、大丈夫です』


『そろそろ、目視でも見えてくるぞ。二号機、見えるか』


『――――――――マジかよ。まあ、そういう任務ミッションですから、当然と言えば、当然なんですが……』


『だよな。私も信じられない……、子供の頃に想像はしたが、この目で見ることになるとは思わなかったな。世界は広い……、いや、「宇宙は広い」だな』


『自分もです。飛んでますよ、黒っぽい緑なんですね。子供のころ想像していたのとあまり違わないというか……』


『ああ。あれは……』


『間違いなく……』


『『ドラゴンだ!』』


『三号機、来るぞ! 接触まで、約1分。チャンスは1度だ、気を抜くな』


『――はい』


『ダメなら、今回は見送る。いいな?』


『了解!』


『さぁ、来るぞ。接触まで、30秒、29、28、27……』


『私、子供の頃、ファンタジーが好きでした! このミッション、参加できて光栄です!』


『5、4、3、2――、頭上を越えたぞ!』


『了解。――――ダメです。やっぱり、シーカーが反応しません』 


『わかった。ジェットエンジンを追っかける設定のままだからな。当然と言えば、当然だ。予定どおり、今回は見逃せ』


『――でも、残念です。サイトには捕らえてるんですよ』


『それで撃っても、意味がない』


『残念です。私がこのボタンを押せば、ドラゴンが落とせるかもしれないですよ。このボタンを、こう――』


 シュバン! ゴオオオオォォォ!


『は? 何やってんだ!』


『す、すいません! ボタンに触れちゃって――、あぁ――……。やっぱり、外れましたね』


『当たり前だ! あ、ドラゴンが旋回して戻ってくるぞ。退却だ! 退却!』






『ダメです! ドラゴンの方が早い! 小隊長! 三号機、追いつかれまよ!』


『あぁ――っ!』

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