第40話

数分後


1つ目の試験の順番が回ってきた。


「では佐久間恵梨さん。どうぞ」


「失礼します」


「うんっ、じゃあよろしくね」


「はい。よろしくお願いします」


彼は笑顔のままだ。本当に審査する人間なのだろうか。彼は私をどう思っているのだろうか。私の父を恨んでいるのだろうか。私はコネ入学しようとしているとでも思っているのだろうか。



もしも私や衣千夜がナメられていると言うのならいい気はしない。これは、全力で行くべきだ。私の頭と心と身体が一体となりそう告げている、そんな気がする。



「では手本です」


彼はそう言い、ピアノで一音ずつ出しながら一定の声量で、「ラ」と言う言葉を軸とし、声を出している。彼が売れていた理由もわかる。


「こんな感じ、じゃあいくよ」


「ラ−−−−−−−−−−−」



私はできるだけ息継ぎをせず繋がるように声を出した。この教室は音楽室だが、声はあまり響くことはない。からこそテストって感じがする。



「はい、終わり。お疲れ様」


「はい。ありがとうございました」


「ね、恵梨ちゃん」


「、、、はい。なんですか?」


「恵梨ちゃんは,何で歌手になりたいの?」


「私が歌手になりたいのは、ただ、幼い頃の夢が歌手だっただけです。特になににも興味を持たなかった私が歌には興味を持てたんです、だからその夢を諦めると言うことは、私の生き甲斐となるものを失うということ。そんなことにはしたくないんです。だから、歌手を目指します」


「そっか。さっくんそっくりみたいだね、ふふっ。恵梨ちゃんと衣千夜くん、確かにいいペアだね、さっくんの言うとおりかも。俺は恵梨ちゃんのこと応援してるから、何かあれば頼ってねっ、じゃあ、頑張って!」


「はい、ありがとうございます。失礼します」

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