第38話
「それでは次に、歌唱力テストですので、音楽室へと向かいます」
「みなさん、こんにちは。私は歌唱力テストを行い、審査するうちの1人の矢部(やべ)と言います。よろしくお願いします」
谷部大雅。彼は少し前まで歌手として、芸能界にいたのを見たことがある。だが、3年ほど前に引退し、教員として働いていると聞いていた。まさかここの高校だとは思ってもいなかったけど。
「では試験内容を説明します。まず1人ずつ低音から高音までどの範囲の声が出るのか審査します。その後、ロングトーン。そして最後にその場で渡された曲をハミングで歌っていただきます。ちなみにどのテストも初めに手本を見せますのでご安心ください」
皆、少しだけざわついているように他見える。これはテストへの思いなのか、谷部大雅に対しての思いなのかはわからない。
デビューしてから意外とモテているようで、今も顔は整っているし、歌手にしてはもったいなかったと思うのは案外事実だったりする。さすがに、本人には言わないが。
「では20分後に始めます」
「衣千夜、頑張ろ!」
「うん。きっと大丈夫だよ」
「ね。君がさっくんの娘さんの恵梨ちゃん?」
「え?そう、ですけど」
「わぁ!やっぱりそうなんだ!会ってみたいと思ってたんだよね!ふふっ」
「初めまして。父と知り合いだったんですか?」
「うんっ、そうなんだよねぇ。今でも食事くらいはいくんだよね!今度一緒に行こうね!」
「それは、考えておきますね」
「あ、ごめん。喋りすぎちゃった。テスト、頑張ってね。恵梨ちゃんに衣千夜くん」
「はい」
「はい」
あの言い方衣千夜のこともわかってる気がする。お母さんが余計なことを言ったのか、お父さんの口が滑ったのか。まぁ、とりあえず今はテストに集中しよう。
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