第29話

「そういうの…直接言えない奴は無理だよ」


「お、小野寺くん!」


「あれ、良真。今日はよく会うね。というかよく来るね」


「よ、呼び捨て…!?」



私の近くにいた子があまり遠くまでは聞こえないような声で言いながら驚いている。



「それに恋人はいるから無理ですよ?先輩方」


「えっ!?そんな話聞いてない!」


「そりゃ公開してませんから」


「だ、誰!?」


「ゆず先輩が勝手に誰かの個人情報を流さないように僕も勝手に流すことはできません」


「うっ…でも!」


「でも、もありませんので。それでは、僕は移動教室なので」



というと彼はスタスタとこの教室を横切って行った。



「はぁ……彼に嫁げばどんなに幸せか…」


「幸せなの?」


「そうだよ!?聞いたことない!?」


「うーん。ないかも」


「そ、そうなんだ、、、」


「うん?」



どうやら彼はとても有名らしい。もしかしたら知らないのは私だけかしれない。

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