【元祖ミステリ】コナン・ドイル「緋色の研究」
緋色の研究 新訳版 シャーロック・ホームズ (角川文庫)
コナン・ドイル (著), 駒月 雅子 (著)
発売日 : 2014/11/25
シャーロック・ホームズ&ジョン・ワトソンの初登場となる長編で、ミステリー小説の基礎となった作品のひとつ。その面白みは年月を重ねても色褪せず、ホームズがワトソンを「アフガン帰り」と見抜くくだりには知的興奮を覚える。二部構成で、冒険ものの要素も含んでおり、独特の読み応えをもっている。
本作では、シャーロック・ホームズとジョン・ワトソンが初登場する。言うなれば、名コンビの結成秘話である。
戦地のアフガニスタンで負傷したワトソン博士は、ロンドンに戻り、傷を癒やしながら過ごしていた。下宿先を探していたところ、以前ワトソンの助手を務めていたスタンフォード博士から、病院の化学実験室で研究をしているシャーロック・ホームズという人物を紹介される。このシャーロック・ホームズ、独特すぎる人物であり、会うにあたって注意を申し付けられる。
なんでも、この男、「解剖学に精通して、化学者としての力量はぬきんでているが、医学を体系的に学んだことはなさそう」「科学にひどく凝り固まっていて、アルカロイドを友人に盛ることは平気でやりかねない」のだという。
ホームズはワトソンと会うなり「アフガニスタンに行っていましたね」と見抜く。やがて二人はベイカー街221番地Bの下宿で一緒に暮らすことになる。バイオリンの名手、ボクシング・剣術に熟達、英国の法律に関する知識が豊富……一緒に暮らすうちに、ホームズの気になる実態が明らかになる。そして謎多き客がたびたび彼を訪ねてくる……。ホームズの職業は一体?
『わずか一滴の水から、理論家はたとえ実際に見聞きしたことがなくとも、大西洋やナイアガラの滝について推理できる。同様に、人の一生も大きな一本の鎖であり、たった一個の環から本質を探りだすことが可能だ』
そう主張しているのは、ホームズが研究しているのは〈推理と分析の科学〉である。
ワトソンをアフガン帰りだと見抜いたのは、医者にしては軍人的なことから元軍医と見受けられること、顔の浅黒さと手首から上の白さで熱帯にいたであろうこと、左腕の不自然な動かし方から負傷を負っていること、軍医が負傷する場所といえば……アフガニスタン。
こうした諸要素への観察と推理、連想からワトソンのアフガン帰りを鮮やかに見抜いたというわけである。
ホームズの職業は……探偵!
そういうわけで、事件解決にこまった警察〈スコットランドヤード〉が頼りにして訪れるというわけだ。
やがて、ホームズのもとに警察が事件解決の依頼に現れ、ワトソンは同行する。
事件現場は奇怪なものだった。
がらんとした大きな空き家。はがれた壁紙、燃え残った赤いろうそく。曇った窓。床には男の死体。そして壁には血で描かれた「RACHE(ドイツ語で『復讐』の意)」の文字。
解決は不可能に思われるこの事件。ホームズはいかに挑むのか?
猟奇性のある演出、数々の証拠から紐解かれる謎、意外な犯人――ミステリー小説の基本フォーマットがここに完成している。それに加えて、興味深いのは本作が二部構成になっていることだ。前半は正統派ミステリー、そして後半は冒険ものだ。その内容についてはここでは語ることを控える。きっと読者の度肝を抜くことに間違いない。
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