俺の世界は、何があるの？

第20話 「足りない自分」を受け入れる

私たちはいつも、「もっとこうでありたい」「もっと頑張りたい」と思うものだ。自分の中に「足りない」と感じる部分を見つけては、それを埋めるために努力し続ける。私もずっと、自分の中の足りない部分を追い求めてきた。スムーズに会話ができないこと、集中力が途切れやすいこと、他人と同じように物事を進められないこと――そんな自分をどうにかしたいと願ってきた。

けれども、いつも「足りない」と感じることに疲れてしまうことも多かった。自分を他人と比較してばかりいると、自分の短所ばかりが目につき、どこか遠くにいる「理想の自分」に手が届かないことが辛くなってしまう。理想に届かない自分を責めることに疲れ、「もうこれ以上、自分を変えるのは無理かもしれない」と感じたこともある。

そんな中で気づいたのは、「足りない自分」もまた自分の一部だということだった。完璧ではないからこそ、人間らしく、味わい深いのかもしれない。足りないところがあるからこそ、誰かの助けを借りたり、他人の力を借りて成長することができる。むしろ、自分が足りない部分を受け入れたとき、心がふっと軽くなり、少しだけ自分に優しくなれるような気がした。

「足りない」と感じる部分があるのは、それが自分をもっと高めるためのサインでもある。完璧を求めすぎず、その足りなさを補うための方法を見つけることができれば、それで十分なのだと思うようになった。例えば、できない部分を無理に変えようとせず、得意なことに力を注いだり、自分らしいペースで少しずつ成長を楽しむという考え方も一つの答えだと感じるようになった。

「足りない自分」を受け入れることは、自己成長を止めることではない。むしろ、それは自分を深く知り、さらに豊かな人生を築くための第一歩だ。自分に足りない部分があることを認めたとき、他人の長所も自然と尊重できるようになり、柔軟な視点を持てるようになる気がする。

これからも「足りない自分」を抱えながら、少しずつ前に進んでいきたい。完璧を目指すのではなく、自分にできることを楽しみ、足りない部分も含めて自分を大切にしていく。そのようにして、足りないからこそ見える景色を楽しみながら、自分らしい歩みを続けていきたいと思う。