第15話 「ここにいていい」と思える場所
人はみんな、自分が「ここにいていい」と感じられる場所を求めているのかもしれない。私にとっても、居場所を見つけることはずっと課題だった。学校でも、職場でも、友人関係の中でも、どこか「自分はここにふさわしいのだろうか」と不安を抱えることが多かった。まるで、どこにいても心が落ち着かず、誰かの影を追いかけているような気分だった。
人に溶け込もうと努力しても、いつも自分だけが場違いに感じてしまう。話の流れについていけなかったり、相手の期待通りに動けなかったりするたびに、どんどん自分が孤立しているように思えてしまう。そんなとき、周りに合わせることに疲れ、自分がどこにも居場所を持てない存在なのではないかと考え込んでしまうこともあった。
だけど、あるとき気づいたことがある。それは、「居場所」というのは必ずしも他人と一緒にいる空間だけを指すものではない、ということ。居場所は、自分が安心していられる場所であれば、どんなところにでも存在し得るのだ。私にとっては、たとえばカラオケボックスで歌う時間や、静かなカフェでノートに思いの丈を書き連ねる時間が、そんな「自分の居場所」だった。誰にも邪魔されず、誰の視線も気にせず、ただ自分の世界に浸ることができる場所――それが、私にとっての「ここにいていい」と思える場所だったのだ。
そのようにして、自分だけの居場所を見つけることで、少しずつ心が穏やかになっていくのを感じる。たとえ他人と同じ居場所を共有できなくても、自分だけの小さな居場所があれば、それで十分だと思えるようになった。そして、そこにいることで少しずつ「自分はこれでいい」と感じられるようになってきたのだ。
「ここにいていい」と思える場所があることで、私は自分を否定せずにいられる。それは、他人と違うことがあっても、自分をそのままで許し、受け入れるための大切な支えになる。自分の居場所を見つけることで、周囲に合わせて自分を変える必要がなくなり、ありのままの自分を少しずつ認められるようになっていった。
「ここにいていい」と思える場所がある限り、私は自分を見失わずにいられる。たとえそれがどんなに小さな空間であっても、その場所が心の避難所となり、自分の存在を肯定する力となる。これからも、自分が心から安心できる居場所を大切にしながら、ありのままの自分で生きていこうと思う。
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