第14話 自分を許すということ

「許す」という言葉は、なんだか大きな意味を持っているように感じる。特に「自分を許す」ということは、思った以上に難しい。私にとって、自分を許すことは、自分の失敗や未熟さを認め、受け入れることだからだ。失敗したり、うまくいかなかったことに対して、つい自分を責めてしまう癖がある。だから、心の中で「大丈夫だよ」「よく頑張ったね」と声をかけるのは、なかなか自然にはできない。


自分を許すことができないと、どうしてもその責めが自分を追い詰めていく。過去の失敗や、不完全な自分が頭の中で繰り返され、心が窮屈になることがある。他人から何かを言われることよりも、自分で自分を否定する方がはるかに苦しい。なぜなら、自分はいつも自分の中にいるからだ。どこに行っても逃げられない分、その重圧はとても大きい。


でも、少しずつ自分を許すことの大切さに気づいてきた。自分を許せるようになると、心がふっと軽くなる瞬間がある。たとえ不完全であっても、そのままの自分でいいと感じられることで、自分を責める必要がなくなるのだ。完璧ではない自分を認めることが、実は成長への一歩であり、本当の強さなのかもしれないと感じるようになった。


自分を許すことは、弱さを認めることでもあるけれど、それが決して悪いことではない。弱さを知り、その弱さと共に生きることが、少しずつ心に余裕を与えてくれる。私が抱える痛みや不安も、自分の一部であり、それらを許すことで少しずつ向き合えるようになる。


ある日、カラオケボックスで自分の好きな歌を歌っているとき、ふと「これでいいんだ」と思えたことがある。歌いながら、心の中の不安や後悔がゆっくりと溶けていくのを感じた。その瞬間、完璧ではない自分も大切に思えたのだ。それ以来、少しずつ自分を許すことができるようになり、日常の中でも以前ほど自分を責めなくなった。


自分を許すことは、他人に許してもらうよりも難しいかもしれない。それでも、日々の中で少しずつ自分に優しくなりたい。失敗しても、悩んでも、それを乗り越えてここまで来た自分を認めることが、何よりも大切なのだと思う。自分を許すことで、私はもっと自由になれる。

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