第45話 夢が冷めるまで

 二人で行く所がなくなった。

 ショッピングモールも、遊園地も、カラオケも全部行ってしまった。正直、もう、二人で行くような場所はなかった。


 だから僕は、高校に行くことにした。

 制服に着替えて家を出る。志穂と待ち合わせをして、二人で登校する。朝の澄んだ空気の中、僕たちはあくびをしながら、高校に向かった。


 教室に入ると、懐かしいクラスメイトたちが、僕に挨拶する。中学時代に戻ったような安心感に、思わず笑みがこぼれる。朝のホームルームが終わると、僕はクラスメイトに話しかけた。僕に買い出しを頼む人は、誰もいなかった。


「……智也くん、ほら号令だよ」


 授業前、隣の志穂に声をかけられて、初めて気づく。僕はクラス委員だった。慣れてなくて、たどたどしく号令をかけると、志穂は面白そうに笑った。

 昼休みには、志穂と机をくっつけて、弁当を食べた。それを周りのクラスメイトが冷やかし、僕たちは怒る。怒りながらも笑う。


「なんだか久しぶりだね」 


 志穂は二段弁当を平らげて、言った。

 よくそんなにも食べれるものだと、僕は関心する。


「そうだね、そのお弁当を見るのも久しぶりだ」

「なに? 食べ過ぎっていいたいの?」

「そんなことは、ないよ、たぶん」


 昼休みが終わり、五限目。

 体育館で行われたのはドッチボールだった。

 僕は本気でボールを投げ、一人相手チーム倒した。隣のコートを見ると、志穂が笑いながら、僕に向かって親指を立てた。その光景を見入ったせいで、相手チームのボールに簡単に当たった。

 そんなことをしている内に、あっという間に授業は終わってしまった。帰りのホームルームを終え、志穂と共に教室を出る。


「暇だからどっか寄っていこうよ」

「いいけど」

「じゃあカラオケね。他の人も誘ってくる」


 放課後、志穂と友人たちと、カラオケに入る。青春っぽい歌を、僕たちは歌った。他のことは何も考えずに、ただ歌った。


「楽しかったー」

「のど枯れそう」


 帰り道、僕たちは二人で夜道を歩く。

 夜空には満天の星が輝き、月明かりが、街を照らしていた。



 その日から僕は高校に通うようになった。

 勉強は辛く、遊びは楽しかった。

 志穂と友人たちと、青春を謳歌した。

 暗い気持ちは何一つなかった。

 そんなある日の帰り道。

 秋が終わろうとする冷たい風を受けながら、僕たちはいつも通り歩いていた。


「ねえ」


 ふいに志穂が立ち止まった。

 僕は悪い予感がした。

 背中を冷たいものが走った。

 僕は、志穂を振り替える。

 彼女はいう。


「いつまで、ここにいるの?」

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