第41話 見えないもの
きっと、今戻っても殴られるだけだろうから、仰向けに寝て、考え事をする。
杉崎や志穂のこと、そして看板を壊した犯人は誰かということ。杉崎に犯人を見つけると言った手前、投げ出すわけにはいかない。もちろんこれは、自分のためでもある。冤罪が晴れたからといって元の関係に戻れるとは、限らないけど。
清々しいほど青い空が広がる中、思考を巡らせる。
犯人は誰か。
文化祭の看板を割り、それを隠しているのは誰か。僕に罪を着せようとしているのは誰か。
まず、あの夜まで遡る。山本が帰り、僕一人になったところに杉崎が来た。完成すると、僕たちら教室の鍵を閉めて、学校を出た。
つまり、犯行が行われたのは朝。僕が登校したときにはクラスメイトがすでに半分以上いたから、誰が一番に教室に入ったのかは分からない。おそらくその人物が、看板を壊したのだろう。
僕は小さくため息をつく。
全く、手がかりがなかった。
当時のことを明確に覚えている人はいないだろう。証言だけで犯人を突き止めるのは、無理がある。僕は推理小説に出てくる探偵ではない。
一時的に雲が太陽を遮り、目の前が暗くなった。
考え方を変えよう。
犯人が看板を壊した理由、つまり動機は何か。
文化祭を壊したかった? あるいは迷惑をかけたかった? ……分からない。想像なら、いくらでも思い浮かぶ。この考え方でもない。
そのとき、屋上に、始業を告げるチャイムが響いた。寝たまま、サボるのは久しぶりだなと思った。
ふいに、雲が流れて、太陽が顔を出した。
眩しい光が、僕の身体に落ちる。
僕は考える。
──この事件で、メリットがあったのは誰か。
眩しい光に、僕は目を細める。
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