第13話 七月革命
『この市民革命を、フランスでは栄光の三日間とも言う。 1815年、王政復古で復活したブルボン朝は再び打倒され、それから……』
五時間目、歴史の授業。
淡々と中年の先生は授業を進めていく。
どこからともなく、いびきやすーすーと眠る音が聞こえる。正直、ほぼ誰も聞いていなかった。受験に向けて勉強する生徒すら、自主勉をしていた。なんとなく、解放された気分があったのかもしれない。
僕は、窓の外から聞こえてくる蝉の音に耳を傾ける。それは、無機質なノイズのようにも聞こえたし、生命力を感じさせるような叫び声にも聞こえた。
季節はもう、すっかり夏だった。
夏休みまで一週間をきり、弛緩した空気が教室を満たしていた。まるで、みんな刑期をやっと終えることができる囚人みたいだった。もう少しで自由が手に入る、そういう感じだ。
その空気に流されるように、僕もぼうっと外の景色を眺めていた。すると、ふいに後ろから肩を叩かれた。後ろを振り向くと山本で、声を落として僕にいった。
「なあ、夏休み、どうする?」
「宿題して、寝たり?」
「ばかやろう、それじゃあ夏休みの意味ないだろ。どっか、遠出しようぜ」
「いいけど、どこに?」
「海だよ、海」
山本は少し笑って「智也も考えとけよ」といって自分の机にうずくまり、うたた寝を始めた。
海か、と僕はまた外を見て、考えた。
そういえば、まだ、志穂と行ったことがなかった。いつかした約束は、突然の事故によって果たすことができなくなっていた。でも、今は、違う。約束を果たすことができる。
僕が作った世界に、志穂がいる。
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