第12話 グモヌシノカミ 2
「死なないだと!?」
頭部を小太刀で切りまくったライゴウが叫んだ。
同じく胴体を細切れにしたウズマが、フラフラと両腕を降ろし、仕草だけでゲンシンに武器を使うように頼んだ。
藤一文字を手にしたゲンシンが、全身を細切れにしつつもピクピクと動く肉塊のグモヌシノカミを剣先で制しながら、ウズマとライゴウと共に後ろに下がった。。
「グモヌシノカミは不死なのか?」
ゲンシンが術の為に憔悴したキヨアキラに尋ねた。
「恐らくはそうかも知れませんが、ここまで切り刻めば、なかなか抵抗など出来ないでしょう。」
「どうすればいい?どうする?」
「封ずる、という手があります。」
キヨアキラは息を吐いた。
「もしかしたら…」
「どうした?」
「受肉する時に全ての核となるものが必要だったのかも知れません。その証拠に五弦の琵琶が見当たらない。」
その言葉に、ゲンシンだけでなく疲労困憊したウズマまで、はっとなって周りを見渡す。確かに。どこにも琵琶が見当たらない。
「核となるものが琵琶ならば、琵琶を奪えば、グモヌシノカミは現し世と交じらわぬ霊体のみの存在と消え果てまする。」
キヨアキラがそう断言すると物探しの術をかけ始めた。
「ここまで持ったのが奇跡だ」犬士ヤスロが弱音を吐いた。
「まだだ。粘り勝つのみ…なんだ、こいつ、これは…!」
叱咤した犬士キヨタが飛び散るグモヌシノカミの肉片が自分の肉に食いついて、蛭の様に血肉を啜るのに恐怖した。
「ええい、切れば切るほど蛭もどきが増え申す。きりがない」
犬士ヒトシは蛭もどきを素手で豪快に引き剥がしていくも、肉片が震えながら、にじり寄ってくる様に天を仰いだ。
「そこもとの…ここだ!」キヨアキラの充血した眼は、しっかと琵琶を捉えた。
琵琶は物理から離れ、何と霊的世界の中に浮かんでいた。
グモヌシノカミとして顕現する為に琵琶と己を交換し、その後供物によって受肉していた。
「琵琶を取り出します。…よし!ここだ!」
キヨアキラは狩衣の袖をまくって空中に手を伸ばし、琵琶を『掴んだ』。
霊体から物質世界に戻された琵琶と交換するように、 グモヌシノカミの命の核が霊体となって消えた。
ボトボトボド…
肉塊が崩れ落ち、グモヌシノカミを構成していた肉体が崩壊する。
同時に支配していた『場』つまり洞窟までひび割れて壊れ始めた。
「皆さん!急いでここから脱出しましょう!」
キヨアキラの声に従わないものはいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます