第2話『転生とスライム初遭遇』


草の匂いと背中のチクチクする感触に、俺は目を覚ました。ゆっくりと立ち上がり、キョロキョロと周囲を見渡す。

どこまでも広がる草原の中に続く一本道は、遠くに見える街に繋がっていた。

バサリと羽を広げる音に天を仰げば、真っ青な空にドラゴンらしき生物が飛んでいる。


「ココが異世界……凄い……」


思わず感嘆のため息を漏らしてしまう。


まずはどこに行ったらいいのだろう?

今気づいたが、俺は一文無しだ。服装は死んだ時のままの学ラン。血で汚れていないし、神様が復活させてくれたのだろうか。でも鞄は無い。スマホもないし、どうするか……。

とりあえず、道なりに沿って歩こう。街にたどり着くかもしれない。


「そういえば、魔法って使えるのかな?」


錬金魔法があるとしか聞いていない。錬金魔法は錬金術と同じで物質を別の物質に変化させるものだと思うんだけど、やり方がわからない。街に行けば図書館があるかな?そこで本を読めば……もしくは錬金術のギルドとか。


そんな事を考えながら歩いていると、もちゃもちゃという奇妙な音が聞こえた。まるで、粘液生の生物が動いているみたいな音。スライムっぽい何か。


呑気に振り返ると、案の定スライムがいた。

水色のボディに丸いフォルムの、ドラ◯エで見るようなスライム。ただし、サイズは超でかい。家くらいあるんじゃないか?


……って、そんな事を考えている暇はない。OK、落ち着け。このスライムは敵か?襲いかかってくるのか?


そういえば、スライムは倒したらアイテムをドロップするのだろうか?スライムゼリーとか。それはドラ◯エか。それともゲームじゃないのだから自分で解体する感じ?

わからん……。でも倒す価値はあると思う。

錬金術を使うには素材が必要と聞くし。


俺は魔法を使おうと手を前に突き出した。


「ファイアーボール!」


………。何も起こらない。


「ウォーターカッター!」


………。何も起こらない。


スライムはのしのしこちらに近づいてくる。

俺は顔が赤くなった。

ちょっとー!!神様、俺って全属性扱えるんじゃないの?何も起こらないんですが。


スライムが大きくジャンプした。こちらに向かって飛び跳ねてくる。


え?死………?


その時だった。

スライムが前触れもなく真っ二つになった。

粘液が飛び散ると、黒い煙を放ちながら消えていく。


驚く間もなく、一人の少年が舞い降りる。

ふわりと白いマントが翻る。

漆黒の髪が風に靡いた。


「君…………」

「さっきぶりだね。やっぱりキミは危なげな所があるんだから」


細剣を構え悠々とこちらに歩いてくる少年。

その中性的な綺麗な声には聞き覚えがある。


「神様………?」

「やぁ、悠介。今のボクはガブリエルだよ」


そう言って、神様ーーもとい、ガブリエルは笑ったのだった。

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