第3話
「ピッピ.....ピッ」
バサバサバサ(飛び立つ音)
何かが飛び立つ音と共に私は目が覚める。いつの間にか焚き火の火は消えてしまっており、薄っすらと白い煙が立ち込めほんの少しだけ熱気を感じる。
私は、先ほどまで使っていた体温で暖かくなっていたバスタオルが落ちたことで、外の冷たい空気が肌に触れ、身震いする。
R「朝は本当に寒いわね.....。」
寝るときにバスタオルがあったことにホッとし、立ち上がって拠点の外に出てみると、ちょうど朝日が上り始めた頃だった。建物が明るく照らされ、昨日の夜に感じた月明かりに照らされて、美しく見えた廃墟の都市とは、また違った美しさがそこにはあった。
私は、新品のタオルを1枚開けて、そのまま一度公園の方まで足を運び、小さな溝が出来ている川へ向かって顔を洗う。
川は本当に澄んでいて、小さな小魚まで泳いでいた。
R「ここまで綺麗なら、本当に飲めそうね.....。」
昨日の昼に思っていた、最悪水が無くなればここから水を汲んで飲むしかないかと考えていたのだが、どうやら本当に飲めそうなほど綺麗で透き通っている。小魚まで泳いでいるのだから、食料も.....。
なんてことを考えていたが、こんな小さな魚じゃ腹の足しにもならないだろう。
R「よいしょっと。」
背伸びをして立ち上がった私は、タオルで濡れた部分を拭いてから、タオルを洗って一度拠点まで戻る。出来れば身体とかも洗いたかったのだけれど、こんな小さな溝に身体が入るわけがないし、飲み水になるかもしれない場所を汚したくなかった。
R「まぁ、仕方ないわよね。」
こんな何もない廃墟の都市で、贅沢なんて言ってられない。
拠点に戻ってきた私は、濡れたタオルを乾かし、リュックサックから栄ヨーバーを一本取り出して、半分だけ食べて水を飲む。
R「今日は、人探ししたり、物資を探すためにあちこち回らないといけないのだから、まずは栄養補給と水分補給をしっかりしとかないとね。」
朝の食事を終えて立ち上がった私は、軽く準備運動をしてナイフを持って拠点の外に出る。昨日見て驚いたが、やはり何度見ても景色が言葉に出来ない程凄い。
R「いやぁ.....絶景ねぇ。」
上を見上げると、晴天の空がビルの間から見え、太陽の光が崩れたビルの割れた窓ガラスに反射して私の顔を照らす。
R「今日は、昨日行った
食缶店の割れた窓から中に侵入し、辺りを見回す。相変わらず陳列棚が散乱し、床のあちこちに開けられた形跡の缶詰や潰れてしまった缶詰が散らばっている。
R「悲惨ね.....。」
ガラカランカンカン(缶詰を蹴る音)
足元にあった缶詰を押しのけて陳列棚の上に乗り、奥に進んでみる。
昨日新品の缶詰が置いてあった場所も一応見直して、さらに奥の部屋のドアに手をやって捻る。
ギィ....キィキ(きしむ音)
ドアの軋む音がするだけで、ドアはちょっとしか開かなかった。何度か体当たりもしてみたり、引っ張ったりしてみたのだが、どうやらドア自体が少し歪んでしまっているせいで何処かにつっかえて開かないらしい。
R「もう!」
ため息を付いて、私はドアを開けるのを辞めて別の場所を探索するために外に出てみる。
R「隣は.....なんのお店?」
看板が剥がれ落ち、道路の上に転がっていたためコケが生えていて文字が見えなかった。私は、コケを剥がして読もうとしたが、結局その文字も掠れていて1文字も読めなかった。
店のドアは開きっぱなしになっているのだが、そのガラスドアのガラス部分が割れてしまっていて、枠しかなくドアの意味を全く成していない。
R「お邪魔しまぁす。(小声)」
パリ....パリ(ガラスを踏む音)
少し薄暗い建物の中に入り中を覗いてみると、そこは服屋だったようだ。所々にハンガーが散乱しており、服も掛かっている。ただ、ほとんどの服が破れていたり、虫に食われて穴が開いていたり、床に落ちて汚れていたりしていた。
奥の部屋に行ってみると、布やハサミ、針や糸等が置いてあったのだが、ハサミや針は錆びていて、ボロボロだし、布や糸も埃を被っていたり、虫に食べられたような跡があったりしている。
R「ここには、何もなさそうね。」
さらに奥の扉らしきところを開けて見ると、2階に通じる階段があり、足元を確認しながら上がって見る。さらに薄暗くなった上の階に到着すると、長い廊下があり、奥の窓は割れており、冷たい風が入ってきている。
R「凄いわね。」
横のコンクリート壁は、少し割れており、隙間から植物が生えている。床のカーペットは、何かの動物の足跡や泥や埃を被っていた。
R「ケホ、ケホ。」
煙たく感じた私は、少し咳をして部屋の扉を開けて見る。
キィっという小さな音と共に、ドアが開いて埃が部屋中を舞ってしまう。
R「ケホ.....ケホ。」
中には、段ボールの箱が積まれており、中を確認してみると、ビニール袋の中に服が何着か入っていた。何箱か段ボールを開けて見たが、その全てがビニール袋の中に衣類が入っており、埃を被っていた。
R「やったぁ。服だわ!」
嬉しかった私は、急いで段ボールからビニール袋に入った服を取り出してみてガッカリする。
どうやら年月が経ったことで経年劣化してしまったビニールは破けていたらしい、中の衣類は湿気ており、ボロボロで穴も開いていて軽く引っ張っただけで破れるほど着れない状態になっていた。
一応何箱か開けて見たが、ほとんどがボロボロで段ボール自体も濡れており、穴も開いていた。どうやら経年劣化だけがこうなった理由ではないようだ。段ボールの箱とビニールの袋には、小さな齧られたような跡がちらほら見える。
R「虫?というより動物?鼠とかかしらね?」
一旦、全ての段ボールの中身を確認するのを辞めて、隣の部屋も開けて見る。
キィっという軋む音と一緒に、また埃が部屋中を舞う。
この部屋は、窓が付いており、少しだけ明るくなっている。
R「あ、電気。」
パチッパチッ(電源を押す音)
(当り前よねぇ。)
今更ながら、部屋の明かりをつけるボタンを見つけたので押してみるが、案の定、電気が付くことはなかった。
R「この部屋は?っと。」
部屋を見回して中に入ってみると、どうやらこの部屋は給湯室のようだ。台所はコケやカビが生えて黒ずんでおり、ちょっとツンとしたカビ臭い匂いがする。テーブルの上には懐中電灯とペットボトルが置いてあり、最近まで人がいたような雰囲気があるが、台所の感じからして、それはないだろう。それに床とテーブルの上は埃が被っている。
ペットボトルを手に取り中を開けて見ると、あり得ないくらい気持ち悪い匂いがして投げ捨てる。
トン(ペットボトルの落ちる音)
ドクドクっと流れるトロッとした黄色い液体が流れ、床のカーペットに染み渡る。さらに、先ほどの気持ち悪い匂いが部屋中に充満する。
R「うへぇぇ......。なんのジュースよこれ......。」
床に落ちたペットボトルのラベルには、スカッとするよレモンSODA!と書いているが、まったくスカッとしたような爽やかな匂いとは真逆の腐った匂いが充満している。
R「兵器でしょこんなの。」
鼻をつまみながらペットボトルの中身を台所に捨てて、1階へ持っていく。
匂いで完全に忘れていたが、テーブルの上の懐中電灯を手に取り、明かりが点くか試してみるが、全く点く気配はなかった。
R「当り前よねぇ。」
ちなみにペットボトルはどうするのかと言うと、一応何かに仕えるかもしれないため、どっかの水場で洗って再利用するつもりでいる。ただ、あの綺麗な川では、絶対に洗いたくないので何処か水場も探すつもりだ。
ちなみに、給湯室の台所の蛇口も、案の定水が出てくる事はなかった。
というか蛇口をひねった瞬間、水じゃなくてカビ臭い匂いが更に強まって最悪だった。
R「うんしょっと。」
しゃがみ込んだ私は、台所の下の小さな収納スペースも開けて見るが、中身が乾ききって何も出てこないキッチンを美しく!という名前の洗剤と、汚い色をしたスポンジしか入っていなかった。一応中身のない(?)洗剤もペットボトルと同じで洗えば使えるかもしれないので一応一階へ持っていく。それから隣の小さな収納スペースを開けて見ると、埃もついていない綺麗で小さな缶詰が1つだけ置いてあった。
R「やった!」
これも食べられるかどうかは怪しいが、食べられるかもしれないので、一応反対側のポケットの中に仕舞う。それから最後に、給湯室の冷蔵庫に手を伸ばし、大きく息を吸って息を止めて開けて見る。
息を止めているのにも関わらず、変な匂いが充満して私に襲い掛かって来る。
急いで冷蔵庫の扉を閉めた私は、その場から逃げ出し部屋の扉を閉める。
R「これは......例え食べれるものが中にあったとしても食べたくないわね。」
電源が消えてからずっと入っていたであろう冷蔵庫の中に、一瞬だけ黒く泥っとしたような物が見えた。
その横には、缶に入った何かのジュースも見たが、絶対に触りたくないし、もう1度冷蔵庫を開ける勇気が出なかった私は、隣の部屋の段ボールの事も忘れて、そのままここで手に入れた物を持ってこの建物を出たのであった。
<持ち物>
巨大なリュックサック
in[ノート1冊、筆記用具(シャーペンと消しゴムのみ)、水の入ったペットボトル2本、栄ヨーバー2本、マッチ1箱]
栄ヨーバー 半分。
サバイバルナイフ
マッチの箱1箱:49/50 (使用中)
バスタオル1枚 (使用中)
タオル1枚 (乾かし中)
タオル1枚 (未開封)
懐中電灯:0/500 New
1個:賞味期限:2014/06/23 カンパン100g (未開封)
1個:賞味期限:2028/09/12 サバっと缶 水煮 (未開封)
1個:賞味期限:2025/12/01 ウマっとコーン (未開封)
1個:賞味期限:2027/08/20 カンパン50g (未開封) New
水の入ったペットボトル1本:24/100
匂いのヤバイペットボトル1本:0/100 New
キッチンを美しく!:???/80 New
現在時刻:昼前(?)
外の天気:晴れ。
気温:肌寒い(?)
健康状態:健康。
本作の主人公:R =
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