第3話 初めての他国冒険者ギルド
-side カルム-
「まずは冒険者ギルドからだな」
「だな」
「だね」
両親と妹を馬車の中に置いてきた俺とアイリスとレオンは冒険者ギルドに顔を出すことにした。
目的地であるウェーメン王国までに、レイピア王国にあるメタルダンジョンに行きたいと俺がわがままを言ったからだ。
中へ入るととてもざわざわしている。
「さすがダンジョン都市だけあって賑わっているな」
「そうだね」
「かしこまりました。ギルドカードをお見せください」
忙しそうにしつつも、俺たちのことをチラチラみてくる人がいるあたり、何人かは既にアイリスとレオンの正体には気づいているみたいだ。
俺?俺は別に有名じゃない。そもそも、生まれてから、フェーン王国以外の国に行ったことがないからである。つまりこの度は、初めての海外旅行でもあるのだ。
とそんなウキウキな気持ちでギルドの受付に並んでいると、順番が回ってきた。
「え、エスランクが2人とAランク!?少々お待ちください!」
ギルド嬢は大慌てでその場を去った。本来、高ランクの冒険者がギルドへ来る際は大体が特殊な魔道具を通して事前に連絡してから行く。そうする事で、事前にこのSランクの人にはこんな依頼が合うのだろうという依頼をその間に見繕って貰うのだ。Sランク冒険者は貴重だから、なるべく彼らの時間を無駄にしたくないというギルド側の配慮だろう。
だが今は緊急事態でたまたま行ったことになっている。そのため、事前の根回し不足によりあわあわしているのだ。
「まあこうなるよねえ」
「そりゃな」
ちなみにSランクというのはそりゃもうすごい、国に1人いればいい方だろう。最近まで俺がAランクなのは知らなかったが、Aランクというのは誰もが知ってる有名人っていうランクだ。その3人がパーティを組んでいるのなんて世界を数えても片手で数える程度ではないか?
「リーダーはもちろんカルムだ」
「えっ!?そんな……2人の方がふさわしいよ。」
「俺はカルム以外がリーダーだったらやらない。俺たち2人じゃまとまらないからな」
「あたしもそう思うわ」
2人に押し切られてパーティリーダーをやる事になった。ありがたいけど、俺なんかで本当に良いんだろうか?次に活かすための練習だと思って頑張るか。
「そうだ!会いてる時間に掲示板見に見ておこう」
「そうだな」
「良い依頼があれば良いんだけれども」
掲示板に向かおうとすると、周りの人たちが道を開けてくれる。
どうやら、みんな聞き耳を立てていたみたいだ。そりゃ気になるよねー。
こうして、3人で依頼を見るのは新鮮である。
俺はそもそも宮廷クラフターだったので、冒険者の依頼を見る機会というのが少ない。
2人は指名依頼で年中埋まっているような人たちだから、わざわざ依頼掲示板に行かない。
「おお、メタルダンジョンの素材採集があるわね、ここの街ならではだわ」
「こっちには金属加工の依頼があるぞ。お前ならいけるんじゃないか?」
「この量でこの値段!?高!冒険者ギルドってこんなに貰えるの?」
「お前……今までどんだけピンハネされてきてたんだよ」
とそんな話をワイワイしていると1人の冒険者が挨拶してきた。
「あの、Sランク冒険者のアイリス様ですよね。そちらはレオンさん」
「そうよ」「ああ」
「あっ!ずるいぞお前、抜け駆け」
「まあまあ……向こう行きましょ」
2人は超有名冒険者だ。あちこちで高ランクの依頼を受けまくっていて、人気もとても高い。こうなるのは想定内。2人が俺に気を遣って、離れた場所に行ってくれた。俺だけその場にポツンと1人になる。
仕方ない、お世話になっているし、2人の分まで依頼を見るか。
「あの、ちょっといいですか」
「……?俺?」
見ると、16歳くらいの男の子がこちらに声をかけてきた…
「人違いじゃなければ、Aランク冒険者、“神の手“カルム様ですよね!?」
「そうだけど」
「やっぱり!ファンです!」
神の手とは俺に与えられた大層な2つ名で間違いなく名前負けしてはいるが事実なので認める。そしてそれを認めた皮切りに他の冒険者に囲われてしまう。
「なんだって!?神の手カルムといえば、フェーン王国から外出を許されていないってあの!?どうしてここに?」
「国王が代替わりになってさ、今の国王に追放されてきた……ちょうどいいから、色々なところに旅をしたいなって」
「今代のフェーン王国国王は無能って言いますからね。よかったですね、逃げ切れて」
「あはは……本当に」
国外だと無能知れ渡っていたのか。あれでも、情報統制かなりしっかりしていたんだな。
国王は無能でも部下は有能だったってわけか、大量に優秀な部下の弱みを抱えていたもんな。
そりゃもう、死に物狂いでみんな働いたものだった。元気にしているかな、あいつら。いや無理か。
いつかあそこからの脱出を手伝ってあげたいところだ。そのためには、まず、俺が地に足つけて他の国で働けるようにならないと。手をぎゅっと握って気合いを入れ直す。
「それで、あのSランク2人が護衛に……あんな天才2人もいて過剰戦力じゃないかと思ったけれど、納得」
「あはは」
幼馴染2人が天才だと認められて嬉しい。すごいのは知っていたが、こうやって外で2人の凄さを外で知る機会はなかったからな。意外と外面とかいいんだなってしれたのもよかった。
俺がいない時も、2人で喧嘩せずにちゃんとやってるみたいだ。
「あの、差し支えなければ、後で俺の武器見てもらいませんか?」
さっきの16歳くらいの男の子が言ってきた。
「あ、そっか。もうこの人フリーってことよね。ずるいわ、だったら私も見てほしい」
「俺も」
「俺も」
わらわらみんな来て武器を見てくれとねだって来た。社畜のフェーン王国考えられないことだ。
あわわ……っとなる。
――パンッパンッ
「はいそこまでー」
慌てていた時、ちょうど止めてくれそうな人物がSランクの2人を引き連れて現れたのだった。
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