第3話 ○○○後編
読まない方が良いと思います。最悪。バッドエンドって最悪。そもそも浮気、不倫、NTR自体が最悪。こんな話を書く自分も最悪。
悲しい出来事は無くなるコトを願います。
*******
次の日、学校に行くと校門でX X Xが待っていた。
私は話すどころか顔も見たくなかったので、気付かないフリをして通り過ぎようとした。
「待てよ、○○○!何で無視すんだよっ!ちょっと考え直せよ。アイツじゃ、お前とは無理だって。どうせアイツから別れようって言われたんだろ?いいじゃねーかよ、俺で!なぁ?」
「やめてよっ!アンタが月人の何を知ってるのよっ!!私には月人しかいないの!本当にもう付き纏うのはやめて!」
「付き纏ってなんかねーよ!なぁ、本当に俺と別れるのかよっ?なぁ?」
「だから、昨日からそう言ってるじゃないっ!もともとアンタとなんかと付き合ってないっ!!」
「・・・そうかよ。じゃあアイツと勝手にしろよっ!!俺ももう知らねーよ、この腐れビッチ!!」
「っ!?・・・あっそ!じゃあもう関わらないでっ!」
この朝の一件で私とX X Xの関係が学年中にバレた。
学区内の学校だからX X X以外にも同じ中学校出身の子達がいる。
私と彼が付き合っているのは中学では有名だったから、私とX X Xの関係は浮気だとすぐに判明してしまった。
その日の午後には、クラスメイトの私に対する態度が変わったのがすぐに分かった。
でも別に構わない。私にとって、彼に許してもらう方がよっぽど大切。
彼に許してもらって、また一緒に居ることが出来るなら・・・最悪学校なんて辞めたって構わない。
私は午後の授業は早退して、早めに家に帰ることにした。
まっすぐ家に帰ると、お母さんが椅子に座っていた。
「お母さん、ただいま。」
「おかえりなさい、○○○。帰ってくるの、早いんじゃない?何かあったの?」
「ん、別に。ちょっと気分が悪くなったから、早退してきたの。」
「そうなの・・・。ねぇ、○○○?本当に今日彼のところに行くの?お母さん・・・考えたんだけど、やっぱり彼に誠心誠意謝って、それで別れた方が良いと思うの。
もう一緒になることは無いかもしれないけど・・・時間が経てば、いつかはまた話せる時が来るかもしれない。ねっ、そうしよう、○○○?お母さんも一緒に謝りに行くから。」
彼はきっと私と別れたら、別の誰かが彼に寄り添ってくれるだろう。多分私なんかよりも良い人が・・・
私は彼と別れたら・・・月人より良い人に出会えることは無いと思う。
多分ずっと後悔しながら生きていかなきゃいけない。
月人と別れて、時間が経って、お互いに別の誰かと結婚して、それで再会するなんて想像もしたくない。
「お母さん、ごめんなさい・・・でも私、やっぱり諦めたくないの。ごめんなさい。」
学校の子達からなんて思われようと関係ない。でも落胆するお母さんを見るのは苦しかった。
だから素直に謝った。
「そう・・・、私の…お母さんのことは聞いてくれないのね…」
「ごめんね。」
それだけをお母さんに言って、自分の部屋に戻る。クローゼットを漁って服を探す。
あった。
月人と初めて付き合うコトになって初めてのデートの時のために、母にねだって買ってもらったワンピース。
随分と久しぶりに見た気がする。たった2年とちょっと前のコトなのに・・・ずーっと昔のコトのような。
なんでこの時の気持ちをわたしは忘れてしまったんだろう・・・
制服を脱いで、このワンピースに着替えて鏡に映る自分を見たら涙が止まらなくなった。
なんで・・・ただ後悔の感情だけが次々と溢れてくる。
窓から入ってくる日の光の色がオレンジ色を帯びてくる頃。わたしは立ち上がって、自分の部屋を出た。
下に降りるとお母さんは居なかった。きっと買い物に出掛けたんだろう。
玄関を開けて、隣りの家の呼び鈴を鳴らした。
「はーい。」
彼のお母さんが出てきてくれた。すごく優しい顔で、わたしのことを気遣いながら家にあげてくれた。
「○○○ちゃん、大丈夫?月人とは昨日…あの後に少し話してね。少しは落ち着いたみたいだから・・・2人きりでちゃんとお話ししなさい。」
「はい。ありがとうございます。」
「人はね、間違っちゃうコトもあるけど…でもやり直せるのよ。きっと大丈夫。頑張りなさい。」
彼のお母さんの言葉が優しくじんわりと私の胸に沁みた。
「はい゛っ。本当に゛っ・・・ごめんなさい゛っ」
それから階段を上がって、彼の部屋の扉の前に立った。心臓がバクバクして・・・息が止まりそうだった。
コンコン・・・
もう引けない。意を決して扉をノックした。
「はい・・・」
彼の声がした。心臓を掴まれた気がした。胃から何かが逆流しそうになるのを・・・必死に抑えて声を絞り出した。
「私です・・・あの・・・お話しいいかな?部屋に・・・入ってもいいですか?」
「うん・・・どうぞ。」
ガチャ
「失礼します・・・っ!?」
扉を開けて中に入ると・・・部屋の中が酷く散乱していて・・・ぐちゃぐちゃだった。
ビリビリに破かれて握り潰された写真が床に散らばっていて・・・
小学校と中学校時代の卒業アルバムは壁に投げつけられたのだろう。壁には穴が空いていてその下に転がっていた。
私と彼との思い出が全て無かったコトにされたみたいで悲しかった。胸がズキズキと痛む。
「ごめんね。ごめんね。ごめんなさい・・・ごめんなさい゛っ・・・」
「うん・・・」
床に散らばってぐしゃぐしゃになった写真を集めて拾って・・・
破かれていない写真は一枚、一枚手で丁寧に伸ばしながら・・・
幼稚園の卒業式の写真。笑ってる彼と横で俯きながら恥ずかしそうにしている私。
小学生の時の運動会の写真。無邪気に2人で笑ってピースをしてる。
遠足の時の写真。中学校の入学式の写真。付き合い始めてから初めてのデートの写真。
頑張って何度も何度も手で伸ばした。
付き合って初めて行った夏祭りの時の写真。
それを見て・・・私は吐き気を催した。
それまでの写真の私と明らかに違う。彼は変わってないのに・・・自分だけが酷く醜く見える・・・涙がまた止まらなくなってしまう。
「ね゛っ、ごめんねぇ゛〜。本当゛にっ、ごめん゛っ」
「うん・・・○○○、僕も色々考えたんだ・・・だからさ・・・別れよう゛っ」
「許゛してくれな゛いのっ?」
「許すよ゛っ。でも一緒に゛っ居るのはっ、僕には出来ない゛っよ!辛いから゛っ!だからっ・・・別れよう・・・」
彼は泣いていた。
胸がズキズキがどんどん酷くなる。
「もうっ、しな゛いからっ!間違わない゛っからっ」
それから何を話したのかあまり覚えていない。
ただひたすら謝罪した。
彼はそれに対してずっと首を横に振り続けた。
コンコンッ
扉を叩く音が聞こえて・・・、彼のお母さんが顔を出した。
「ごめんね。ちょっといいかしら?○○○ちゃん、もう遅くなっちゃうから今日はもう帰りなさい。また明日来ても良いから。ねっ?」
「はい゛・・・」
それから私は毎日彼の家に行って謝り続けた。
学校には私の居場所は無かった。中学時代の同級生が私と彼の話を広めてしまったからだと思う。
私に好意を持って声をかけてくるのは、今まで関係も全然無かった男の知らない先輩と同級生だけだった。
私の居場所は月人のトコロだけになってしまった。
でもそれで良かった。この状況になるコトで私は罪を償っている気持ちに少しだけなれた。
3週間くらい経った頃・・・彼に変化が訪れた。
「分かった・・・」
彼は私に向かって…それだけだったけれど・・・言ってくれた。
「うぅう゛・・・あ゛りがとうっ゛。私っ、絶対にもう月人を裏切ったりしないからっ゛。」
これからやり直していけば良い。
もう一度2人の思い出を積み重ねていこうって自分に誓った。
彼のお母さんにお礼を伝えた。
「そう。良かったわね。本当に月人がなかなか許してあげられなくてごめんね。2人の仲良い姿をまた見れるのは・・私も嬉しいわ。」
家に帰ってお母さんにもこのコトを伝えた。
お母さんは軽くため息を吐いたけれど・・・
「分かったわ。あなた達2人がちゃんと話し合って決めたのなら・・・私からはもう何も言わないわ。・・・もう二度と彼を傷つけるようなコトをしたら駄目よ。」
そう言って、少しだけ笑顔になってくれた。
それから私はお母さんにこれから毎日彼にお弁当を作ってあげたいって思っていて、だから料理を教えて欲しいって言った。
「いいわよ。じゃあこれからは毎日いつもより1時間は早く起きなくちゃね。」
お母さんの笑顔を久しぶりに見た気がした。
それからは毎日が楽しかった。
朝早く起きて、お母さんと一緒に月人のお弁当を作って。今までより、ずっとお母さんと仲良くなれた気がした。
学校に居る間はずっと月人との将来のコトを考えていれば、気まずいクラスの雰囲気も気にはならなかった。
夜、月人と毎日電話で話した。いつもわたしから一方的に話すだけで、彼は相槌だけだったけれど。それでもいつかは彼からの話しを聞けるようになれると思っていた。
週に一回のデートではキスも手を繋ぐコトも無かったけれど、一緒に居れるコトが嬉しかった。
私は付き合う前の気持ちを思い出したりして幸せだった。
月人とやり直してから初めてのクリスマス。
お母さんに頼んで、ちょっとお洒落な服を買ってもらった。
月人へのプレゼントは色々悩んだけど・・・
高級なボールペンにした。
彼はすごく勉強を頑張っていたから。
隣りの家の呼び鈴を鳴らした。すごくドキドキする。
彼のお母さんから今日は月人しか居ないって聞いていたから。
もしかしたらって思って下着も新しいモノにした。
こんなにドキドキするなんて・・・
ガチャ
彼が玄関を開けてくれた。
「いらっしゃい。入っていいよ。」
「うん。お邪魔するね。」
彼に案内されてリビングに行くと、テーブルには2人で楽しめるようにと彼のお母さんが用意してくれたのだろう料理が並んでいた。
「月人・・・これわたしからのクリスマスプレゼント。」
そう言って彼に渡す時に、彼の手に触れた。
何ヶ月振りかに触れる彼の手。
少し震えていた。
私は今まで彼に対してずっと受け身だった。
だから今度は私がリードしようって思った。
震えている彼の頬を掴んでキスをした。
何ヶ月振りだろうか。
心が震えた。
私は止まらず彼の唇に自分の舌を差し入れた。
月人ともっと深く繋がりたいって思った。
グッ
突然息が苦しくなった。
彼から唇が離れた。
「月…人・・・?」
耳に入ってきたのは彼の泣きながら謝る声…
「ごめん゛っ。ごめん゛っ。赦せなくてっ゛、ごめん゛っ・・・」
私は彼の頬に手を伸ばした。
私の手が彼の涙で濡れたのが分かった。
私はどうすれば良かったのだろうか。
きっとわたしは変わるコトが出来たと思う。
彼と一緒に明るい未来を進むコトが出来ると思った。
「月・・・人・・・ごめ・・ん・ね・・・・」
彼の頬をそのまま撫でた。
「ごめん゛っ、ごめん゛っ、ごめんなさい゛っ」
どんどん意識が遠くなっていく・・・
ああ、でもこれで私は月人の心の中にだけ居られるんだ・・・
なんで・・・わたし・・・
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