人目
ゆらゆらと揺れる水面の、波が折り返す岸の一点を見つめながら、今日も生きたなあと考える。
電車は発車して数秒後、時速何kmかもわからぬはやさで目の前をとおりすぎた。チカチカと眩しい光を、風とともに見つめながら、ここへ飛び込んだらどうなるかと考える。
別にすぐに死にたい訳ではなかった。
早朝の電車、仕事終わりの電車。人身事故が多いのは、はしる電車が私たちを引き込んでいるからだと感じる。
私は今の生活に満足していた。これから今よりも幸せになるという意識意気込みが私の中に生まれると、未来に希望が持てて、ただ真っ直ぐに頑張ろうと思えた。でもそう思った帰り道で、この恐ろしい思想が浮かぶ。浮かんだ瞬間否定した。
ここで死んでたまるものか。
いなくなりたいと思うことはある。でもそんな自殺願望がある訳ではなかった。
そんな私みたいな人の魂を、電車は無理やり乗せようとする。
東京に慣れてきた時、ガードレールに安心した。
あれがなかったら私は今頃…。
冷たい水面に足首を浸す。
せめてさいごは誰にも見られず、
1人で安らかに
それぞれの生き方 はるかとおく。 @harukatooku
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