第3話 魔の5日間

宇宙は出逢った時から、とにかくいつも心が不安定な人で、その事で幾度なく凛子も、振り回されて来ている所が多々ある。


今の宇宙は、どうやら…現職の介護という仕事に、行き詰まりを感じているようだ。


宇宙は以前は営業マンとして

別の会社で働いたことがあった。

しかし…

その営業マンの仕事にも、行き詰り所か…命を絶ちたいと思うまでも追い詰められたぐらい…苦悩してきていた過去がある。



だけど営業マン時代の方が、脇役側ではなくて、会社で言う所の稼ぎ頭になるので、どちらかというと表舞台役で

あったことで、責任としてはノルマもあるので、かなりの重圧の中で生きては来ていたのが…華やかで生き生きしていた感覚が、宇宙にはあるようだ。


現に、給与も歩合制なので

成果を上げた分…それに相当した報酬を、頂けていたらしい。

営業マン時代は金銭も豊かで、何度も海外旅行にも、出掛けていたようなのだ。


結果がすべての仕事内容だったので、宇宙は出世していく目標も持てたらしい。


それが今の介護の仕事は、営業マン時代と全く違って、何の目標も持てないし、ただただ…日々…利用者さんの下の世話に繰り返しの連続みたい。


だから…こんな仕事に…こんな人生に…何の希望も持てない…。

そんな事ばかりを言う宇宙であった。


凛子は最初は…うんうん、そうだよね…って聞いたり、勇気づけたり、していたのだったが、これじゃあ悩み相談係みたいな気がしてきて、宇宙に凛子なりの魂の叫びを

向けたのだった。


凛子:

『いい加減…

 過去の栄光に縛られたままの人生はやめなきゃね!』


『もっと自分の今の仕事に誇りを持ちなさいよ!』


宇宙はその後も…グダグダ言っていたが‥凛子はもう聞かなかった。


その日を境に…宇宙からは何も言っては来なくなった。

凛子もその覚悟はしていた。


とにかく宇宙にはもっともっと、自分に自信を持って、今の仕事に誇りを、持ってほしかった。


私と宇宙は魂のふたごちゃん

なんだから…とにかく凛子自身の魂を磨く事に専念しようと思った。

私の魂がどんどん磨かれていけばカタワレの魂の宇宙にも

必ずいい影響をもたらせる事になると凛子は信じていたからだ。


その日から宇宙に向けての

メッセージではなくて、自分に向けてのメッセージとして、宇宙に毎日、思ったことをlineすることにした。


もちろん宇宙からは、それに対するコメントはない…。

でもそれでも凛子は毎日…送り続けた…。



それから三か月が経った頃、宇宙からlineが来た。


宇宙:

『実はずっと凛ちゃんからの lineは見てなかったんだ…。

僕は引きこもりだしたら世の中の全てが真っ黒になってしまい…断絶してしまうから…。

 

『でも、ようやく…最近…

凛ちゃんのlineを開く事が出来て、それからゆっくりじっくり…凛ちゃんからのメッセージを、読み始めているんだ…。』

『そしたらなんと…僕の思考にはない、発想だったり…考え方だったり…感じ方だったり…何十回も読み返したんだ…。今改めて…凛ちゃんの素晴らしさに感動しているよ。』


凛子は想像もしていなかった言葉を、宇宙からもらえて驚いていたのだった。


宇宙が元気になって良かった…。


やっぱり私自身が…今やるべき事を精一杯やっていく事で、宇宙にもプラスの影響を、もたらせる流れになるんだ!って凛子はさらに自信が持てたのだった。


宇宙は初めて凛ちゃんの人間性の部分に、興味がわいてきたのだ。だからなのか…

やたらめったら凛ちゃんに…

lineをして『今は何してるの?』って聞くようになっていった。


凛子も宇宙から頻度のlineが来て『今何してるの?』って

聞かれることが増えて不思議に思っていた。

いつしか凛子も…マメにしょっちゅうlineをしてくる宇宙との時間が習慣となって行ったのだ。


そんな時…急にまた宇宙から

lineが来なくなった。凛子は心配になって、宇宙にlineを送った。


凛子:

『宇宙~何かあったの?』

『とても心配しているので

 連絡ください。』



―でも…

 lineは既読にならなかった…―



凛子は心配症が度を超すと、物凄くネガティブな発想に、なる所があった。

そうなると不安がつのり過ぎて、度を超す言動をしてしまうのだ。


でも…今は宇宙にlineでメッセージを送るか、電話をかけるしか、方法がない…。

でも、どちらをしても…応答がない…。


凛子は夜中に何度も何度も、目が覚めては…宇宙が既読してくれないか…気になって、気になって、落ち着かなかった…。


四日目の夜…もう心配しすぎて…。

不安がピークに行き過きて…。

もしかしたら…宇宙は

亡くなってしまったんだわ…

もう二度と会えない覚悟を、

決めないとね…と

そこまで思いつめる想像性にまで、精神が追い詰められてしまっていた。


そんな覚悟を決めた翌々日の

6日目の朝…。lineを見たら…既読になっていた。


あぁ~宇宙…生きていた…。

ほっとした…。ここ6日近く…凛子は生きた心地がしない感じだった。

食事も食べてはいるが、ただ口に入れているだけで、味を感じていたかさえ…分からない感じだった。


宇宙から

『今日、会えない?』ってlineが来たので凛子は嬉しくて…

『うん、会おう』って返事を送った。


実は、宇宙は…この5日間は…『肺炎』になりかけて、かなり危険な状態だった事を

話してくれた。


いつも凛子なら…そうだったんだ…苦しかったね…

でも、めちゃめちゃ心配してたんよぉ~。

って軽いトーンで返せていたのだが…


その時の凛子はもう限界で…

思わず宇宙に…。

『これから先、また連絡がない時は、宇宙がもう消えたと思う事にするから!』と

かなり強めの口調で語尾を切るような物言いで、この6日までの苦しかった気持ち等を、ありったけの感情で宇宙に、ぶつけてしまったのだ。


その時の凛子はおそらく、宇宙と出逢ってから一番…精神が不安定な凛子になっていたからなのはある。


元々、宇宙と凛子は精神がいつも不安定なのは宇宙で、凛子が割に…それをそれなりに

受け止めながら、対応して来ていたのだったが…。


今回ばかりは…

寛大に受け止めるキャパは凛子にはなかった。

そのぐらい…凛子の心はクタクタにくたびれ果てていたのだった。


宇宙は凛子からの強烈な言葉にいつも以上に、宇宙の感情に火をつけた。

宇宙は尋常な神経でない凛子に恐怖も感じた。


宇宙は元々、人に対して敵味方みたいな所があり、自分に攻撃してきた者に対しては、容赦なく打ちのめす所がある。


今まで凛子と大喧嘩して来た事は、多々あったが…

ここまで敵対心の相手だと凛子に思ったことはなかった。


なので宇宙は本能的に自分を守らなきゃと思い…。

凛子に突き刺さる言葉を叫んだのだった。

『僕が仮に亡くなっても!家の周りでウロウロするなよ!』


もう2人は、売り言葉に買い言葉状態で…お互いに収集がつかない感じにどんどん

なってしまったが、凛子自身も…あっ…ちょっと

言い過ぎたなぁ…って省みる気持ちも湧き起こらなかったのだ。


怒りを通り越して呆れるわ!

状態の凛子ではあった。


凛子は宇宙の車から早々に降りて、無言でドアを閉めて、自分の車に乗って帰ったのだった。













 

 

 








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