第4話 さぁ、お前の罪ぃぃぃぃぃ!?
馬車に乗って街道を進んでいく。隣の街までは数日かかるそう。先の長い旅になりそうだ。時間の管理を少しでもミスすれば、入試に間に合わなくなりかねないので、俺はこの日のために緻密な計画を練って来た。
移動時間に関しては考えておいたが、さすがにここまで暇だとは思わなんだ。
「なぁミスティ。何か暇をつぶす方法はないか?」
「頭の中でチェスでもします?」
なるほど、名案だ。頭の回転も鍛えられるし、暇つぶしにもなる。さすが我が魔法の師だと褒めてやりたいところだ。
ちなみに大敗した。悔しい。モテるためにはこういう有名な娯楽も極めておかないとな。後で特訓だ。
「しかしミスティ、この揺れで酔わないのか?」
「実はちょっとずるしてます。魔力の負荷はかかりますが、無属性魔法でちょっと浮いてます」
この世界の人間はこの揺れで酔わないとはなんとたくましいのかと思っていたらこのざまである。
「そういうことは先に言え。俺も使う」
「確かに普通の人の魔力量では扱えませんが、ガイ様なら扱えますね。失念していました」
というわけで無属性魔法のミスティナ命名「ちょっと浮くやつ」を教えてもらった。魔力をドカ食いする割にただ浮くだけという実用性が皆無に近いものだが、こと馬車においてはすごく役にたつな。
俺、馬車乗るの初めてだから、ずっと酔い覚ましの魔法を繰り返し自分にかけていたんだが、さすがにそれよりはこちらのほうが魔力の効率がいい。
酔わなくなる魔法を作れって? そりゃ厳しいな。脳に直接作用する魔法はかなり構造が難しい。できたとして、下手をすれば洗脳魔法の構造に近くなり、使用すれば罪に問われる。
ま、浮いてる方がいいってこった。
ミスティナに脳内チェスの稽古をつけてもらっていたところ、馬車の進行方向に戦闘の気配があることに気が付いた。
魔物の魔力は感じられないことから、人間対人間の争いであることもわかった。
これは盗賊とか、そういうアニメでよくあるテンプレ的な感じかと考えていると、馬車が動きを止めた。
戦いの場所の目の前までたどり付いたのだ。
「ミスティ」
「わかってますよ」
俺は馬車からおりて、前の馬車を襲っている盗賊どもに声をかける。
「さぁお前の罪いいいい!?」
名言を放ってから戦闘に入ろうとしたところ、ミスティナによって盗賊たちは全員光魔法で頭を打ちぬかれて死んだ。
なんて容赦のない。俺は捕縛して騎士団にでも突き出そうと思っていたのに。
盗賊と戦っていた馬車の護衛も驚いた顔をしているぞ。
「とりあえず安否確認だな。ミスティ、護衛の人たちの回復を頼む。俺は馬車の中を確認する」
「かしこまりました」
俺は馬車のドアをノックし、中に入って確認をしてみた。
中には執事のような人と、俺と同じくらいの年の女の子がいた。
あーなんかテンプレって感じがするわ。
「えーと、盗賊は倒しました。よろしければ身元を確認させていただいても?」
すると、少し震えながらも女の子の方が答えてれた。
「わ、わたしはランドゥール伯爵家の次女、イルミ・ランドゥールです……この度はお助けくださりありがとうございました。あの、あなた様のお名前は……」
これはこれは我が公爵家と隣接した領地を持つの伯爵の子じゃないか。
「私はロックハート公爵家長男、ガイズ・ロックハートと申します」
そういうと、彼女はとても驚いた顔をした。
「……失礼ですが、これからどちらに向かわれるのかお伺いしてもいいですか?」
「ああ、ミュゼンの街に向かうつもりです。ダンジョンに用がありましてね」
ミュウゼンの街はランドゥール家の領地内にある。便宜をはかってくれたりしないだろうか。
「そ、そうですか! もしよければ私と一緒に行きませんか? ダンジョンに用ならいろいろ私も役に立てると思いますし」
「それはありがたい話ですね。是非お願いします」
イルミちゃんだっけ。かわいいしな。こういう子に好かれたいし? 相手に好意を持ってもらうには会う回数が重要だと聞いた。毎日顔を合わせれば多少好意を持ってもらえるのではないだろうか。
「じゃ、じゃあその……また盗賊とか来たら怖いので、うちの馬車にお乗りいただけたりは……」
「お嬢様。ロックハート様は公爵家で、我が家より性能のよい馬車に乗っておられるのです。わざわざ性能が落ちる馬車に乗ってほしいなどと、失礼に当たってしまいますぞ」
あーでたでた、社会の授業でそんな感じの勉強したわ。怖いんならしかたないだろ。
「大丈夫ですよ。私と、私の護衛の1人がこの馬車に乗りましょう。これでどんな敵が来ても安心です」
ミスティは王都でかなり高名な魔法使いだしこれで安心だろう。
俺ってば気遣いができる男だぜ。
悪役転生!? どうでもいいからモテさせてくれ! ニア・アルミナート @rrksop
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