第3話

「目が覚めたかい?」

「あれ、オジサン誰?」


どうして公園に。


「君が突然倒れたから助けたんだが、余計な事だったかな。君が自分で来たんだよ。氣がついたなら自分で歩こうか」



行き先は聞かなくてもすぐにわかった。

お父さん。

メガネ越しに視線が交わったが、その目は通り過ぎていく。


お母さん。

いや、お母さんもだ。僕の弟マモルの手を引いて。歩いて行く。


マモルは、目が合ったのか一瞬。

思い出そうと探してみる顔をして。

だけど、お母さんが手を引いたら自然に興味をなくし歩いて行く。


どうして。次の場所も知っている。

学校。僕の席には。

いや席がない。


塾。

名札がない。全てない。

いつもそうじをしてくれている、おばちゃんが。可哀想に、と。

僕の場所だった所の名前シールの跡を剥いでいる。


どう言う事だ?


「さあ、そろそろ思い出せるかな」

オジサンが言って。

反論しかけた、その時に。


ああ。

全て思い出してしまった。

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