砂漠のバザール見物
マリーンは翌日早起きすると、窓から砂漠に太陽が昇る神秘的な姿を見ることができた。
「とーってもキレイね」
「マリーン様、早起きですね!」
ルンナも窓からの幻想的な眺めにウットリとしている。
「今日は、バザールに行ってみたいの。掘り出し物の武器や防具なんかもあるんでしょう?」
「マリーン様には武器は必要ないのではないですか?私達がお守りしますし!」
「以前、追いはぎに合ったじゃない?一応、私も護身用の剣とかあるといいのかなって思って」
「うーん。朝食の時にリム様達に相談してみましょう!」
身支度が済みルンナが男性陣の部屋の扉をノックすると、男性陣もすぐに出て来た。
「マリーン様、よくお休みになれましたか?」
「ええ。ぐっすりよ。日の出も余裕で見られるほど早起きできたわ」
「それは良かったです。我らはあの後、少し酒を飲んでおりました」
「ベック様が酔われて興味深い話も聞けましたね」
「余計なことを言うのではない。ちょーっと気分が良くなってつい亡き妻のことを自慢しただけじゃ」
男性陣は酒盛りが楽しかったようだ。やはり今までの町とは違って異国情緒あふれるこの地での滞在は、解放感が増すらしい。
テラスの食堂で朝食をとりながらバザール見学の話をする。皆それぞれ見たい物があったらしくスンナリと許可は出た。だが、マリーンが護身用に剣を持ちたいと話すと男性陣が反応した。
「マリーン様が武器をお持ちに?我らだけでは心配でしたか?」
「オレが全力でお守りしますので!」
「武器まで使えるようになったら姫というよりすっかり旅人じゃな」
1人はともかく、リムとナインは心配しているようだ。
「戦いたいわけじゃないわ。でも、旅をするなら女性もそれなりに武器とか持っていた方が安心かなと思っただけ」
「うーん、まあ用心しているのは良いことですが。マリーン様がお持ちになると、やはり短剣あたりが妥当だろうか」
「ムチもおすすめですね!」
「ムチは近距離では不利だろう」
リムとルンナ、ナインがマジメに話し合っている。とりあえず、バザールを見てから考えようということになった。
朝食が済み、出かける準備を終えるとマリーン達はさっそくバザールに出向く。午前中はまだ気温も低く、日陰ができるように屋根もたくさん作られていて過ごしやすかった。
客引きをするおばさんにマリーンは呼び止められた。
「お嬢さん方!そんな長い髪の毛を下ろしていたらアッという間に絡まっちゃうよ!うちで髪ヒモ買っていきなよ!」
砂漠は乾燥しているので、風が吹くと砂が舞い上がり髪の毛がすぐに絡みやすい。
「ルンナ、髪ヒモ必要よね?」
「はい!風が吹くたびにすぐ絡んじゃいますもんね!」
ということで、女性陣は雑貨屋で髪ヒモなどのアクセサリーが売られている露店に早速足止めされたのだった。その後も、泉にある滝で水浴びにピッタリだという、乾きやすい生地を使った大きな布を売る店などでことごとく足止めをくらうとベックは耐え切れず、お目当ての薬草図鑑を探しに行ってしまった。
「……女性陣は買い物が好きですね」
「やはり女性は武器や防具よりも美しいものが好きだな」
微笑ましそうにリムがマリーン達の方を見ている。心なしかルンナに目線がいっている気がしてナインは気になっていたことを聞いてみた。
「リム様......その、ルンナのことをどう思っているのです?」
ナインは気を使ったつもりだが、口下手なナインはダイレクトに聞いてしまった。
「急に何だ? ルンナは可愛い後輩だろう」
「後輩、というだけなのですか?」
「何が言いたい?」
「ルンナはリム様を好いているようですが」
「バカな……ルンナと私は20も歳が違う」
「正直、オレも最初はそう思いましたが、リム様が言われたではないですか。“人はいつか死ぬものだ”と」
「確かに言ったが、私とルンナを結び付けるのは違うだろう」
「オレと姫様は2人がお似合いだと思っています」
「なんだと?姫様も?」
「はい」
「お前はともかく、マリーン様まで何というカンチガイをしておられるのだ」
リムは自慢のヒゲを指に巻き付けながら顔を赤らめている。ナインはリムが本心を隠す時や照れた時にヒゲを指に巻きつけるクセを知っていた。
「オレは2人を応援していますので!」
「鼻血出してブッ倒れたヤツに応援されたくないな」
「そ、そのことはもう良いではありませんか!」
からかわれ話がうやむやになったが、リムが前向きに考えてくれると良いなと、ナインは思った。
「リム~、ナイン~!そろそろ武器とか防具を見に行こうと思うわ」
タイミング良くマリーンが声をかけてきた。
「はい、行きましょう!」
ナインが元気よく答えると、まだリムは顔を赤くしてヒゲをいじくりまわしていた。
「この剣はブラーク遺跡から出てきた勇者の剣だよ!どうだいアンタぐらいガタイのいい男なら使いこなせるだろう!」
店の主人がオススメする剣は遺跡から出て来たにしてはキレイでとても古くは見えない……。
「女性にはコレがオススメだよ!この短剣はとってもキレイだろう?守りの宝玉が付いているからお守りにも丁度いい!」
こちらも守りの宝玉だという玉はただのガラス玉に見える。主人はニコニコと次々と商品をオススメしてくるが、正直、どれもこれもマガイ物みたいだ。
「色々と思うところはあるけどキレイはキレイね」
「装飾的な品としてはいいかもしれないですね!」
護身用の剣として役立つかはナゾだったが砂漠のバザールに来た記念にと、マリーンはオススメされた短剣を購入することにしたのだった。
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