第3話

「なにしてんの。ってかいまどこ?」

夜10時。職場から戻らない僕を心配して有咲が電話を寄越した。


「……」

「どうしたの。」

「…いい。めんどくさいから。」

「…話してよ。教えて?なんか嫌なことでもあった?」


有咲は終始冷静に、落ち着いて話してくれていた。


「……いい。なんでもない。」


それでも塞ぎ込む僕に、有咲が言った。


「…流星。違ったらごめん。。。今、もしかしてあたしと??」


やはり彼女は見抜いていた。



「…うん。でも、有咲を傷つけたくない。」

「だから落ち着くまで帰ってこないつもりでいたの?」

「そう。」

「あたし、流星ならいいよ?何されても大丈夫だよ?」


「…噛み付いても?」

「噛みついてどうしたい?」

「噛み付いてイかせたい。。」

「そう…」

「いいよ、 他あたるから、」


鼻で笑う彼女に僕がそう言うと、


「あてはあるの?」と聞いた後直ぐに電話が切れた。




─────────有咲の自宅付近の公園。


「……」

「……殺したい。」


現れたのは有咲の前職の後輩。

隣に座った彼女に対して挨拶がわりにいつものように片手で首を絞めた。


「お好きにどうぞ。」


彼女は見透かした様に囁く…。


「…でもいいや。俺、有咲あいつでいい。」

「なぜそんなに拘るんですか?あの時は誰でもよかったのに。」

「…そうだな。あの時はな…。むしろ有咲なんて視界にも入ってなかった。」

「それにちょっと避けてませんでした?」

「避けてた。」

「なのになんで今は有咲あの人なんですか?」

「…なんでなんだろうな。」

「今のうちじゃないですか?私に戻ってくるの。」

「…めんどくさい。」

「?…。私がですか?」

「そう。…なんていうかその話し方は凄く好きなんだよ。そそられる。でもさ、足りない。」

「何が足りないんですか?」

「…闇。憂いって言えばわかるかな?」

「…『面倒臭い』のは多分あの人の方ですよ。私以上。」

「……帰れ。」

「私じゃダメですか?」


「……」


僕は微笑みながらまた彼女の首を締めていた。

……愛を込めて。


「……何時いつでも呼んでください。どこへでも行きますので。」

「……」

「わかってます。だから私は待ちます。」


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