第21話
亜種オーグ・ハイドラを討伐した後、俺たちはギルド本部に戻り、討伐の報告をするために特別室に案内された。
そこは通常の冒険者では立ち入れない特別な部屋だった。案内された先には、ギルドマスターが待っていた。
「よく戻ったな、ゼラン」
そう言ったのは、ギルドマスターのイリオスだった。彼はエルフの中でも長寿で知られる存在で、見た目は若々しいが、その目には深い知識と経験が宿っている。
肩まで伸びる金髪が美しく整えられ、その背筋はまっすぐだ。銀色の瞳が静かに俺たちを見据えている。
イリオスはかつていた伝説の賢者弟子で、エルフ族の中でも最も優秀な戦士として名を馳せていたそうだ。
今はギルドのマスターとして冒険者たちを導いているが、その実力はまだ健在だ。彼はどんな状況にも冷静で、常に最適な判断を下すことで知られているそうだ。
「今回の任務、かなりの難敵だったと聞いたが、まずは報告を聞こう」
イリオスの声は穏やかだが、その瞳は俺たちのすべてを見透かしているような鋭さを持っている。
俺はリリスとノエルと共に席に座り、亜種オーグ・ハイドラの討伐に至るまでの経緯を一つ一つ話した。
イリオスはじっと話を聞きながら、時折うなずき、最後まで表情を変えなかった。
「亜種のオーグ・ハイドラか…。誰も見たことのない亜種とは驚きだな。討伐に成功したとは見事だ」
イリオスの言葉には賞賛の色が含まれていたが、どこか奥深い意味も感じ取れた。
彼はさらに俺を鋭く見つめ、少し間を置いてから口を開いた。
「なるほど、ゼラン…君はただの冒険者ではないな」
その瞬間、空気がピリッと緊張感を帯びた。
イリオスの目は鋭く、まるで俺の心の中を見透かしているかのようだった。
俺はその視線に少し戸惑いながらも、どう答えるべきか考えた。
「君の力、その戦いぶりは…普通の人間ではない。それに、私はエルフだ。魔物の気配を感じ取ることは容易い」
イリオスの言葉に、ノエルは驚いた表情を浮かべた。彼が俺の正体に気づいていることが明らかになった瞬間だった。
「…そうか、見破られていたか」
「ゼラン、この人とノエルは信頼できる人なので大丈夫ですよ?」
俺は軽くため息をつき、観念して口を開いた。
「俺は確かに魔物だ。カマキリとして生まれ、進化を重ねてここまで来た。そして今、人化の力を使って人間の姿を取っている」
イリオスは静かに俺の言葉を聞き、その後ゆっくりと頷いた。
「なるほど…人間としての姿を取っている魔物か。だが、君はそれでも危険な存在ではないようだ。むしろ、その力を正しく使っているようだね」
イリオスは一瞬、微笑みを浮かべた。その微笑みには、俺に対する信頼と期待が込められているようだった。
「ゼラン、君のような存在がいることは異例だが、今回の討伐での働きを見れば、君がギルドにとって重要な存在であることは間違いない。私が君の正体を知っていることは、ここにいる者たちだけの秘密にしておこう」
イリオスはそう言って、静かに立ち上がった。そして、Bランク冒険者のメダルを俺に手渡した。
「これがBランクの証だ。君がふさわしい冒険者であることは、このメダルが証明する。だが、君の真の強さはこれからも試されることだろう」
俺はそのメダルを受け取り、イリオスの言葉に感謝の意を示した。
「ありがとうございます、イリオスさん。これからもギルドのために最善を尽くします」
イリオスは再び微笑み、俺たちに手を振って見送った。
ギルドを出た後、ノエルが俺に近づき、真剣な表情で話し始めた。
「ゼラン…助けてくれてありがとう。正直、あの亜種に勝てるとは思っていなかった」
ノエルは一瞬言葉を詰まらせた後、少し顔を赤くしながら続けた。
「もし君が許してくれるなら、私も君たちの仲間として一緒に行動したい。助けてもらった恩返しも含めて…君と共に戦いたい」
俺はその言葉に驚きながらも、すぐに笑みを浮かべて答えた。
「もちろんだ、ノエル。君の力があれば、俺たちはさらに強くなれる」
ノエルは一瞬ほころんだ表情を見せ、安心したように頷いた。そして、リリスも微笑みを浮かべながら言った。
「これで私たちのパーティーはさらに強力になるわね」
こうして、ノエルが正式に仲間に加わり、俺たちは次の冒険に向けてさらに力をつけていくこととなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます