第20話

ノエルをかばい、俺は何とか彼女を安全な場所に避難させたが、討伐隊の他のメンバーも次々と亜種オーグ・ハイドラの猛攻に倒れ、戦える者がほとんどいなくなっていた。


 負傷者が増え、誰もが息を整えようとするが、立ち上がる余裕すらない。


「……ゼラン、私たちだけよ。もう、他の人は戦えない」


 リリスの声が低く響いた。


 彼女の言葉に、俺は戦場を見渡した。倒れている冒険者たち、戦意を失いかけている者たち。


 戦えるのは、リリスと俺だけだった。


「リリス……俺たちだけで、この化け物を仕留めるしかないってことか」


 俺は彼女の方を見やりながら、心の中で戦略を練り直した。


 人間の姿で戦うのも限界が近い。


 なら、俺がカマキリの姿に戻って、慣れた戦い方で挑むしかないか、今なら誰にも見られてないだろう。


「人化を解除するしかないか……」


 俺は心の中で覚悟を決め、魔力を集中させた。


 体が一瞬、光に包まれ、再びカマキリの姿へと変わっていく。


 人間の姿よりも遥かに軽やかで鋭い動きが可能になった、これで、今まで以上に素早い攻撃を繰り出せる。


「ゼラン……その姿で戦うのね?」


 リリスが俺の変身した姿に目を見開いたが、すぐに覚悟を決めたように頷いた。


「ええ。あなたが慣れているなら、それが一番いいわ。私が魔法で援護するから、集中して!」


 俺は頷き、亜種オーグ・ハイドラに向かって再び突撃した。


 カマキリの姿に戻ったことで、今まで以上のスピードで亜種の頭を攻撃できる。


 ファントムスピードを使い、さらに素早い動きで次々と斬撃を繰り出した。


「今よ!ゼラン!」


 リリスが後方から強力な火魔法を放ち、亜種オーグ・ハイドラの再生能力を一瞬封じ込める。


 その隙をついて、俺はカマキリの刃で頭を斬り落とした。


「まだだ!」


 亜種の体が蠢く中、俺は素早く頭を狙い続け、連続攻撃を仕掛けた。


 俺が最も得意とする戦い方だ。この力を使い切るまで、俺たちは絶対に負けない。


 俺は亜種オーグ・ハイドラの攻撃を避けつつ、鋭い一撃を繰り出していた。


 しかし、斬り落とした頭が次々と再生する厄介な状況が続く。これでは、どれだけ攻撃しても決定打にならない。


「この再生能力をどうにかしないと……」


 俺は次の手を考えながら、リリスの援護で敵の動きを封じている隙にクリムゾンブレード使った、ただの斬撃だけでなく、相手に炎の持続ダメージを与え、再生能力を抑えられるかもしれない。


「これで!……どうだ!」


 俺は一閃し、クリムゾンブレードで亜種オーグ・ハイドラの頭を斬り落とした。


 真紅の剣が放つ瘴気が、亜種の傷口に染み込み、いつもならすぐに再生するはずの頭がその動きを鈍らせていく。


「再生が遅くなってる!」


 リリスがその変化に気づき、火魔法で援護する。


 俺はその隙を見逃さず、さらにクリムゾンブレードで次々と攻撃を加えていった。


 再生を封じられた亜種は、一瞬のうちにその回復速度が低下し、俺たちに有利な状況が生まれた。


「これで再生を止める間に、仕留める!」


 俺はファントムスピードで加速しながら、亜種オーグ・ハイドラに連続で斬撃を浴びせ続けた。


 リリスもその隙に強力な魔法を放ち、俺たちは攻撃の手を緩めることなく、決定的な一撃を狙い続けた。


 亜種オーグ・ハイドラは再生能力が鈍っているとはいえ、まだ完全に止まったわけではなかった。


 残された頭が一斉に俺に向かって襲いかかってくる。


 俺は素早くその動きを見切り、左右に跳びながら刃のような腕で応戦する。


「リリス、もう少しだけ耐えてくれ!」


 俺は再生が鈍った今がチャンスだと確信し、最後の一撃に集中するため、リリスにもう一度援護を頼んだ。


 彼女はすぐに呪文を唱え、再び亜種オーグ・ハイドラの動きを光魔法で鎖で縛り付け封じた。


「今よ、ゼラン!」


 リリスの声に応じて、俺は再度ファントムスピードを発動し、亜種の全ての頭に素早い連撃を繰り出した。


 次々に斬り落とされた頭が再生する暇もなく、クリムゾンブレードの炎によって再生が完全に封じられる。


「これで…決める!」


 俺は最後の一撃に全ての力を込めた。


 クリムゾンブレードの輝きが亜種オーグ・ハイドラの巨体を包み込む。


「燃え尽きろ!」


 俺は全力で鎌を振り下ろし、リリスが炎の魔法で燃やし、炎が亜種オーグ・ハイドラの体全体に燃え広がった。


 頭だけでなく、その巨大な胴体までもが炎に包まれ、再生する余地すらなく焼き尽くされていく。


 体は崩れ、燃え尽きた亜種オーグ・ハイドラは、とうとうその巨体を地に沈めた。


 静寂が訪れた。俺は人化しその場に膝をついた。


「……終わったのか?」


 リリスが俺の隣に駆け寄り、慎重に周囲を見渡す。亜種オーグ・ハイドラはもう動かない。


 リリスは微笑みを浮かべながら、静かに頷いた。


「ええ、ゼラン、完全に倒したわ。私たちの勝利よ!」


 俺は深く息をつき、カマキリの姿から人間の姿に戻ると、その場にへたり込んだ。


「危なかったな。でも、やっと終わった」


 リリスも疲れた様子で俺の隣に座り込んだ。


 彼女も限界に近かったのだろう。


 だが、その目には達成感と安堵が見えた。


「あなたがいなかったら、ここまで来れなかったわ。ありがとう、ゼラン」


 俺は少し照れくさそうに笑いながら、静かに頷いた。


「俺もリリスがいなければ、この化け物には勝てなかった。だから、これでおあいこだな」


 このようにして、亜種オーグ・ハイドラとの戦いは幕を閉じた。


 この戦いで俺はかなりレベルが上がった。


 名前: ヴァルカ・マンティス

 種族: カマキリ

 レベル: 150 / 160

 ランク: B


 基本ステータス


 •HP: 35,000

 •MP: 12,000 / 12,000

 •攻撃力: 19,000

 •防御力: 13,500

 •素早さ: 17,000

 •スタミナ: 13,800

 •知性: 9,000


 •攻撃スキル

 斬撃 Lv8

 風魔法 Lv8

 クリムゾンブレード Lv4

スティールブレードLv5

スペクトラルスラッシュLv3


 •補助スキル

 ファントムヒール Lv5

 ファントムスピード Lv6

 ブラッドリジェネ Lv4

気配感知Lv2

危機感知Lv2

 •防御スキル

 マナシールド Lv6

 魔法適用 Lv4


 •特殊スキル

 擬態 Lv8

 人化Lv2







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