第19話
ゴブリン討伐の依頼を受け、俺たちは森の奥深くに進んでいた。
リリスと共に歩いていると、ゴブリンの群れが近づいてくる気配を感じた。
「ゴブリンがいるな。数は多くないが…」
リリスは頷き、辺りを見渡した。
「ええ、ゴブリンの数は少ないけど、慎重にいきましょう」
俺は人化状態でゴブリンキングの宝物庫から貰った、炎の魔剣と風の魔剣を構え、リリスも魔法の準備を始める。
ゴブリンたちが現れると同時に、俺は一気に距離を詰め、先頭のゴブリンを斬りつけた。
ゴブリンは驚く暇もなく倒れ、そのまま二体目、三体目を続けて倒す。
「風刃!」
リリスの風魔法が、ゴブリンたちの残りを切り裂く。
二人の風の刃が舞い上がり、最後のゴブリンを切り倒した。
「ゴブリン討伐はこれで終わりかと思ったが…」
俺は剣を収めながらリリスに話しかけた。
その時、森の奥から異様な気配が漂ってきた。
何か異様な気配が漂ってきた。ゴブリンではない、もっと強力な何かがいる気配だ。
「リリス、何かいるな…ただのゴブリンじゃない」
リリスも感じ取ったのか、緊張した表情で周囲を見渡している。
「ええ、間違いないわ。これは…少し強い魔物ね。近づいてきているわ、ゼラン、気をつけて」
やがて木々の間から巨大な影が姿を現した。
その姿は、鋭い爪と硬い甲殻を持ち、恐ろしいオーラを放っている。
俺は剣を構えながら、魔物をじっと見つめた。
「リリス、こいつは何なんだ?」
リリスは魔物を一目見て、その正体をすぐに理解した。
「これは……シェルドラゴンよ。ドラゴンの一種だけれど、完全なドラゴンではなく、進化が途中で止まった亜種なの。甲殻が非常に硬いから、普通の攻撃は通りにくいけど、隙をつけば討伐できるはず」
「シェルドラゴンかドラゴンというより亀に近い姿だな…。厄介そうだが、倒せない相手じゃなさそうだな」
俺は魔剣を構え直し、シェルドラゴンに向かって突進する。
リリスの言う通り、その甲殻は硬く、剣を弾き返す。
だが、動きが鈍いのが救いだった。
俺は素早くシェルドラゴンの背後に回り込み、甲殻の隙間を見つけて魔剣を突き刺した。
「よし……!」
魔剣が甲殻の隙間に食い込み、シェルドラゴンは苦しそうに吠えた。
俺は続けて追撃をかけ、リリスも後方から魔法で援護する。
リリスの風魔法がシェルドラゴンの体を斬り裂き、俺は再度甲殻の隙間に斬りかかる。
やがて、シェルドラゴンは力尽き、その巨体が地面に倒れ込んだ。俺は剣を納め、リリスの方に向かって微笑んだ。
「思ったよりあっけなかったな。これでゴブリン討伐よりも良い報酬がもらえそうだ」
リリスも微笑み返しながら頷いた。
「シェルドラゴンなんて、こんな場所で見かけるはずのない魔物だから、ギルドでも話題になるわね。ちょっとしたニュースになるかも」
ギルドに戻り、俺たちは討伐報告を行った。
受付のエルフの女性にシェルドラゴンの討伐報告を伝えると、彼女は目を見開いて驚きの声を上げた。
「シェルドラゴンですか!?それは、通常この辺りには生息しないはずですが……本当に討伐されたのですか?」
リリスが冷静に答える。
「ええ、間違いありません。ゼランが討伐しました。これがその証拠です」
リリスが討伐証拠として持ち帰ったシェルドラゴンの甲殻を見せると、受付の女性はさらに驚いた表情を浮かべた。周囲の冒険者たちもざわめき始めた。
「シェルドラゴンを討伐したのか?あれはCランク以上の魔物だろう……」
「新人でそれを倒すなんて……」
冒険者たちは驚きの声を上げ、周囲が騒がしくなった。
俺は肩をすくめて、リリスに軽く笑いかけた。
「そんなに大したことじゃないんだけどな」
リリスも微笑みながら俺を見つめる。
「ゼランにとってはそうかもしれないけど、周りの人にとってはすごいことなのよ」
ギルド内は、シェルドラゴン討伐の話題で盛り上がっていた。
冒険者たちが次々と俺に視線を送ってくる。
リリスの正体がバレたこともあり、さらに注目されているようだ。
俺はその視線に少し居心地の悪さを感じながらも、ギルドの受付に討伐報告の手続きを済ませた。
「これで報告は終わりか。次の依頼もすぐに受けられるのか?」
受付のエルフの女性は、少し戸惑いながらも慌てて答える。
「はい、もちろんです。ただ、シェルドラゴンを倒されたということで、少し時間をいただいて報告を確認させていただく必要があります。それが終わりましたら、報酬と次の依頼をお渡ししますので、少々お待ちください」
俺は頷いて、その場を離れた。リリスが隣で苦笑いを浮かべながら言う。
「ゼラン、本当にあのシェルドラゴンを簡単に倒してしまったんだもの、冒険者たちがあなたに注目するのも無理ないわ」
俺は肩をすくめた。
「そうかな?褒められるのは嬉しいからいいけど」
リリスは同意するように頷き、二人でギルド内の席に座った。そこで次の依頼を考えていたところ、突然、ギルドの扉が勢いよく開かれた。
「緊急依頼だ!森の南側で新たな魔物が発見された!」
ギルド内の緊張感が一気に高まった。
先ほど扉を開けて入ってきたギルド職員が、切羽詰まった表情で冒険者たちに告げた。
「緊急のAランク依頼だ!森の南側で、強力な魔物が確認された!すぐに討伐隊を編成する必要がある!」
ギルド内がざわめき、冒険者たちが一斉に動き始めた。
Aランクの依頼は、ギルド内でも最上級の難易度を誇り、熟練の冒険者でも命を賭けるような仕事だ。
俺はその知らせに思わずリリスに目を向けた。
「Aランクか……」
リリスは少し考え込んだ後、真剣な顔で頷いた。
「ええ、Aランクの魔物は通常の魔物とは桁違いの強さを持っているわ。でも、ゼランならきっと大丈夫よ。私も一緒に行くわ」
俺は少し考えた後、立ち上がりギルド職員に近づいた。
「俺たちもその依頼に加わる。Aランクの魔物が相手なら、挑戦する価値はあるだろう」
職員は驚いた様子で俺を見たが、すぐに書類を手渡してきた。
「本当に参加するんですか?Aランクの依頼は非常に危険です。熟練した冒険者でも討伐は容易ではありませんが……ゼラン様、先ほどのシェルドラゴン討伐の腕にリリス様も認めている実力なら、どうかご参加をお願いしたいです。これが今回の魔物の情報です」
俺は情報を受け取り、リリスと共に内容を確認した。
「『オーグ・ハイドラ』……多頭の魔物か。再生能力を持っていて、通常の攻撃では倒しきれないとあるな」
リリスが情報を読みながら続ける。
「オーグ・ハイドラは、Aランクの魔物として知られているけど、再生力があるせいで討伐は非常に困難よ。一度倒したと思っても、再生して立ち上がるわ。特に頭を何度も叩き潰さないといけないのが厄介ね」
俺は笑いながらリリスに向き直った。
「厄介な相手だが、俺たちならいけるだろう。これまでの経験を活かして戦うしかないな」
リリスも決意を込めて頷いた。
「そうね。私たちの力なら、きっと倒せるはずよ」
ギルドの準備が整い、Aランクの魔物討伐に向けて出発することが決まった。熟練の冒険者たちと共に俺たちもその討伐隊に加わり、オーグ・ハイドラに挑むことになった。
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