第3話

次の日も森で昆虫狩りを続け、スキルレベルも上げ、経験値を着実に増やしていた。


 そんなある夜のこと、進化まであと一歩のところまで来ていると感じていた俺は、さらなる強敵を求めて森の奥へと足を踏み入れた。


 その日の夜の帰り道に俺の前に現れたのは、異様に大きく威圧感を放つ昆虫だった。


 甲殻が暗い光を放つクワガタが、目の前でじっと俺を見つめている。


「こいつは…今までの相手とは違う。」


 彼は身構え、クワガタの圧倒的な存在感に気圧されつつも、レベル10に到達するための最後の試練だと考えた。


 俺はまず、持てるスキルをすべて活用して攻撃を仕掛けた。


 素早い動きでオオクワガタの周囲を回り込み、隙を突いて斬撃を繰り出す。


 しかし、クワガタの硬い甲殻は、カマキリの攻撃をほとんど通さない。


「くっ…防御力が高すぎる!」


 クワガタはカマキリに向けて巨大な顎を振り下ろす。その一撃はまるで鉄塊のような重みで、カマキリは素早く後退して避けたものの、緊張が高まる。


「このまま正面からでは勝てない…」


 そう悟った俺は背後を取ろうとするがなかなか隙がない。お腹はそこまで硬くないはずだ。抑える力ではこっちが上、鎌で押させつけて顎で噛みちぎれば勝てるはずだ。


 周囲の草木に紛れ素早く動いて不意打ちで背後を取る。


「今だ!」


 クワガタは気づいたようだがもう遅い俺の鎌で既に身体は押さえつけた、後はもうお腹を噛むだけだ。


 クワガタは抵抗してるがお腹を食われて弱ってきてるのがわかる時間の問題だろう。


 クワガタを捕食し終え息を整え、得た経験値を確認した。クワガタから得られた経験値は今までにないほど多く、俺のレベルはついにカンストまで到達した。


 名前:カマキリ(元人間)


 種族:昆虫カマキリ

 レベル:10 / 10

 ランク : F

 基本ステータス

 •体力(HP):140

 •魔力(MP):9/ 9

 •攻撃力:120

 •防御力:87

 •素早さ:131

 •スタミナ:36

 •知性:14

 スキル

 •擬態:Lv3

 •斬撃:Lv3


「やった……これで、進化ができる!」


 俺は疲労と達成感に満たされながら、進化が訪れるのを期待して森の隠れ家へと戻っていった。


 体が疲れているのか、目を閉じると眠気が襲ってきた。自分が何を成し遂げたのかを考えながら、俺はそのまま夢の世界へと沈んでいった。


 次の日の朝、目が覚め俺は、何かが違うことに気づいた。体中に力が漲り、内なる変化を感じる。


「これは…進化の兆しだ!」


 今の自分の姿を確認する。緑色の体が少しずつ、成長している。体が新たな力を求めているのだ。


 突如目の前に現れたのは、光る二つの選択肢。それぞれの進化先が表示される。


 1.選択肢A: 「スウィフトブレード」

 •ランク:Eランク

 •特徴:攻撃速度が上がり、敏捷性が増す。

 •能力:敵への一撃が鋭く、弱点を狙う精度が向上する。

 •技:「スティールブレード」:敵の防御を10パーセント無視して攻撃できる。

 2.選択肢B: 「シャドウダンサー」

 •ランク:Eランク

 •特徴:身のこなしが軽やかになり、回避能力が向上する。

 •能力:敵の攻撃をかわしやすくなる。

 •技:「エヴェイジングダンス」:敵の攻撃をかわしつつ反撃する技。


 俺は心の中でどちらの道を進むべきか悩む。どちらの進化先も魅力的だが、自分の戦い方やこれからの冒険を考えると、選択は簡単ではない。周囲を見回し、静かな森の中で自分が何を求めているのかを考えた。


「俺が目指すのは、敵を打ち倒し、強くなることだ。だが、いかにしてその力を手に入れるかが重要だ…」


 考えを巡らせ、ついに俺は選択を決めた。


「俺は、スウィフトブレードを選ぶ!」


 その瞬間、周囲の空気が変わり、光が俺を包み込む。体が熱くなり、力が溢れ出てくるのを感じながら、進化が始まった。


 進化が終わり、新たな姿に変わった。刃のように鋭い前肢を持ち、身体が軽やかになっていた。新たな力を手に入れた。



 名前:スウィフトブレード


 種族:カマキリ


 レベル:1 / 20


 ランク : E


 基本ステータス

 •体力(HP):410

 •魔力(MP):20/ 20

 •攻撃力:170

 •防御力:120

 •素早さ:191

 •スタミナ:104

 •知性:52

 スキル

 •斬撃:Lv3

 •擬態:Lv3

 •スティールブレード:Lv1

 •スウィフトダンス:Lv1


 成長ポイント


 •次のレベルまでの経験値:0 / 100

 •進化条件:レベル20


「これで、もっと強くなれる!新しいスキルも覚えたみたいだなどんなスキルだ?」


 •スティールブレード(Lv1)

 攻撃時に敵の防御を無視してダメージを与える。

 •効果:敵の防御力を10パーセント無視し、直接的なダメージを与える。

 •用途:高防御の敵に対して有効。鎧を持つ生物や硬い外殻を持つ敵に対する対策。

 •スウィフトダンス(Lv1)

 身体を素早く動かし、敵の攻撃を回避するスキル。

 •効果:一定時間、素早さを大幅に上げ、回避率が増加。

 •用途:防御力が高い敵や複数の敵と戦う際に有効な回避スキル。


 進化後に獲得した新スキル「スティールブレード」と「スウィフトダンス」は、予想以上に有用だった。


 まず「スティールブレード」は、相手の防御力を無視して直接ダメージを与える特性があり、高い防御力を誇る昆虫やモンスターにも効果的だ。


 これまで硬い外殻を持つ相手にはなかなか有効打を与えられなかったが、このスキルならそれが可能になる。


 例えば、かつて苦戦した甲虫系の敵ともまともに戦えるかもしれない。


 また「スウィフトダンス」は、急激に素早さを引き上げ、敵の攻撃をかわす回避スキルだ。


 攻撃の速度が増すのはもちろん、素早さが重要な生物であるカマキリにとっては、一撃離脱の戦法がより強力になる。もし危険な状況に陥っても、このスキルを使えば逃げやすくなるだろう。


 その夜、再び隠れ家で休み、翌朝になると、薄明りが差し込む中、再び探索の準備を整えた。


 周囲を確認し、警戒を怠らずにゆっくりと森を進む。進化して少し大きくなった体を動かしながら、次なる獲物を見つけるべく注意深く周囲を観察する。


 ふと、小さな光が視界に入る。遠くの茂みの奥で、前にも見た赤い目がこちらをじっと見ている。


 サイズは自分より大きく、全身が緑色で筋肉質だが、どこか鈍そうな印象を与える。


 そう、これはまさに昨日見かけたゴブリンだ。この異世界に生息する人型の怪物が、そこにいるのだ。


「周囲に仲間はいなく弱っているようだ、それに一体しかいないみたいだな……狩るか」


 もう一度周囲に他の気配がないことを確認し、ゴブリンと1対1なら勝機があるかもしれないと考えた。


 相手は鈍そうで、こちらに気づいているものの、まだ警戒心を抱いていない様子だ。この機を逃さず、先手を打つべきだろう。


 慎重に距離を詰め、気づかれないよう身を低くして「擬態」のスキルを発動。


 周囲の景色に溶け込むように体を隠しつつ、ゆっくりとゴブリンに接近する。スキルの効果が持続している間に、間合いを十分に詰めた。


 そして、目前まで迫った瞬間、擬態を解き「斬撃」を繰り出す。


 鋭い鎌が閃き、ゴブリンの肩に深い傷を刻み込む。鈍そうだったゴブリンも痛みを感じて初めて反応し、怒りに満ちた叫び声を上げてこちらに殴りかかってきた。


 ここで新しいスキルスウィフトダンスを発動し、素早さを一気に引き上げる。


 ゴブリンの拳が迫ってくるが、スキルのおかげで軽やかに回避し、素早い動きで側面に回り込む。そのまま再び斬撃を打ち込み、今度はゴブリンの脇腹を切り裂いた。


 そして仕上げに、スティールブレードで防御を10パーセント無視した一撃を放つ。


 鎌がゴブリンの胸に突き刺さり、重い体がゆっくりと崩れ落ちた。ゴブリンは最後の抵抗もなく、動かなくなる。


「倒せたな、このスキルなかなか使えそうだ」


 倒したゴブリンを見下ろしながら、進化して得たスキルの効果を改めて実感し確かな手応えを感じた。


「レベルも一つ上がってるな一体でかなりの経験値が貰えるのは美味しいな、数が少なければ積極的に倒しておこう」

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