第3話

ロベルトは庭師ではあったものの、庭仕事以外の事も大抵うまくこなしていた。聞くところによると、彼も育ててくれた母親が亡くなって、庭師以外にも料理人や郵便配達、その他言えないような事まで様々な仕事をしてきたらしい。アンナの家でも庭師の仕事が終わった後は、アンナの手伝いから、継母の愚痴を聞いたり、わがままな姉達の希望に応えたりと、様々な事を難なくこなす。お陰で彼らの機嫌が悪い時でも、アンナの身体に痣が増えることもなくなった。

 そんなロベルトと共に仕事をするうち、アンナの心は次第に彼へと惹かれていった。彼がアンナの境遇を理解した上で自分を気遣ってくれること、それでいて同情ではなく自分と対等に接してくれていることが分かったからだ。

アンナを見かけると笑顔で手を振ってくれる彼。自分の仕事が終わった後、笑いながら必ずアンナを手伝ってくれる彼。

 灰色だった毎日が、少しだけ色づいたような気がしていた。

 彼と、一緒に生きていきたい。

 ロベルトが庭師になってから数年。いつの間にかアンナはそんなことを思うようになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る