第5話

人間の姿に戻った少年は、血のにじんだ地面を見た。


血に濡れた自分の服を見た。


いなくなった怪物と、自分を見る人間たちの顔を見て、そしてすべてを理解した。


ああ、やってしまった。


少年は悲し気にそう言った。怪物を退治したとはいえ、彼らを怖がらせてしまったことには違いない。


もうここにいる事はできないと、少年はその場を去ろうと村人たちに背を向ける。


そして一歩踏み出そうとしたとき、後ろの方から行かないで、と声が聞こえた。


少年は足を止め、くるりと声の方を振り返る。そこにいたのは瞳に涙を浮かべたあの少女だったのだ。


「ありがとう。貴方は、私を、私たちを助けてくれた。それに私、貴方と過ごしていた時間が好きだったの。お願いだから、何処にもいかず、ここにいて」


それが発端となり、生き残った村人たちの口からは少年への感謝と称賛の言葉が溢れだす。


ありがとう。凄い。お前のお陰で助かった。


歓声の嵐を浴びて、少年は瞳に涙を浮かべた。


暗い雲の間から、一筋の光が差し込んで、優しく大地を照らしていた。

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