第3話
そんなある日の出来事だった。
その日は今にも雨が降りそうなほど、空は黒く厚い雲に覆われていた。
いつも通り壁にもたれかかりながらぼんやり窓の外を眺めていた少年の耳に、つんざくような叫び声が聞こえたのだ。
にわかに騒がしくなる外の気配に、いつもとは違う何かを感じた。
逃げろ。早く。殺される。
そんな不穏な言葉が、幾つも幾つも飛び交っている。
少年の心臓が早鐘を打った。
何が、外で起こっているのか。
重い鎖をじゃらりとならし、立ち上がって木の格子の隙間からちらりと顔をのぞかせた。
そして、目を見張った。
そこにいたのは、人間なんて丸のみしてしまいそうなほどの大きな虎。
背中には翼が生えており、鋭くとがった牙は長い。その口元は朱く血に染まっており、次なる獲物を捕らえようと残忍な視線で逃げ惑う人間たちを射貫いていた。
想像を絶する光景に、少年は思わず口を押える。内臓がよじれ、たまらず胃の中の物を吐き出した。
もう、どうしようもできない。皆が死んでいくのを、黙って見ていることしかできない。そうして最後に、自分もきっと殺される。
がたがた身体を震わせながら、少年は涙を零して崩れ落ちた。
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