第2話

酷く長い時間が訪れた。


日が昇り、日が沈む。月が出て、また沈む。


白んだ空が青く変わり、紅を纏って紫に染まる。


小屋にある窓から、その移ろいをただただ眺めるだけの日々。


つけられた枷は重く冷たく、立ち上がることもままならない。相も変わらず腹は減り、満たされることのないまま一日が終わる。


そんな灰色の日々が続く中、少年には唯一の楽しみがあった。


それは皆が寝静まった夜深く。


月明かりを辿りながら、毎晩一人の少女が食事を片手に少年の小屋を訪れる。


その少女は村長の家の使用人で、少年に食事を運ぶ仕事を言いつけられている様だった。


ある時には果物、ある時には魚を、少年に笑って手渡した。


そして一等楽しみなのが、少年がそれを食べている間に少女がしてくれる様々な話。


ヤマブドウがたくさん取れたこと、隣の村から人が遊びに来たこと、珍しい虫を見つけたこと。


そんな他愛もないことを、少女はとても楽しそうに話すのだ。少年の事を、一つも怖がる事なく嬉しそうに。


食事は腹の足しにもならなかったけれど、その時だけは、少年の心は温かいもので満たされてるのだった。

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