第28話 旅立ちの準備




 ナイアの木刀の件で、レヴィアに叱られた次の日。

 リビングのクッションに座っているナイアに謝った。


「ナイア、昨日はごめんな」


「うん…私平気だよ!私ね…刀術に目覚めたみたい…なの」


「きっかけは、分かるか?」


「たぶん…木刀貰う前からかも…」


「不思議だな。ナイアのステータス見せてもらってもいいか?」


「うん…見せる」


 ナイアは、俺の方に手の平を向け、ステータスを表示させる。


 【ナイア】


 種族:水神の眷属

 レベル:16/1000

 体力:180000

 攻撃力:180000

 防御力:180000

 魔力:280000

 俊敏力:180000

 幸運値:2100

 マナ:380000/380000


 スキルポイント:5

 スキル:〈自動マナ回復〉〈異空間収納〉〈エール〉〈刀術〉

 スキルレベル:〈戦闘水人形バトルウォータードール〉Lv3〈水斬〉Lv1

 称号:水神の子、水龍の愛娘、黒兜の契約者、刀術継承者

 


 ナイアに言った通り、〈刀術〉に目覚めており、ナイアとの模擬戦闘をした際に使用したと思われる〈水斬〉というスキルがあった。


 刀術継承者の称号に関しては、海底の孤島しか心当たりが無いので、勝手に継承された可能性があると、俺は思っている。


「〈刀術〉が芽生えたのは、この称号に関係あるだろうな」


「私…刀で強くなれる…ってこと?」


「そうかもしれないな!」


 ナイアと話していると、レヴィアがダンジョンモニターを閉じて、椅子から立ち上がり、此方に寄ってきた。


「ナイアの木刀の件、何か分かったかの?」


「刀術継承者という称号がナイアにあったんだよ」


「なんと!?ワシの父と同じ称号じゃぞ!」


「お爺様…と同じ?」


 ナイアは不思議そうにしていたが、レヴィアはとても嬉しそうな様子だった。


「称号って、勝手に付くものだと思ってたけど、違うのか?」


「普通はそうなのじゃが、刀術継承者という称号は、孤島に居た時代に村一番になると村長から継承されていたのじゃよ」


「へぇ。でも途絶えてるはずなんだろ?」


「そうじゃよ。ワシも〈刀術〉は使えないのじゃが、ナイアが刀術を扱えるのは運命なのかもしれんのう!」


「…良い事?」


「その通りじゃ!成長すれば、ワシの父を超えるかもしれんのう」

 

「ほんと!?…私…頑張る!」


 ナイアはやる気に満ち溢れていた様子で、俺は安心した。

 昨日の事で、木刀は使わないと言われたらどうしようかと思っていたが、大丈夫みみたいだ。


「俺も力になるぞ!スキルを受け止められる程、俺も防御力上げるからさ」


「父様…また斬っても…いいの?」


「おう!防ぎ切ってやるよ!」


 レヴィアは、俺とレヴィアの言葉を聞いて口を釣り上げる。


「カブトもナイアもやる気の様じゃし、2対1でワシも相手してあげようかの!」


「母様は強いから…父様でいい」


「なんじゃと!?カブト、お主ずるいぞ!」


「俺はその分、レヴィアと稽古できるから別にいいけどな」


「ぐぬぬ。カブトの返しはずるいのじゃ!」


 レヴィアは照れていたが、ナイアにそっぽを向かれて、レヴィアは振られた様子で、少し落ち込んでいた。

 俺に全て来るとなると、今後の稽古は、ハードになると確信する。

 

 現実逃避も含めて、俺はフロマとモルビエの方に声を掛ける。


「フロマ!モルビエ!〈鑑定〉してもいいか?」


 ラメルのカプセルの周りに居るフロマとモルビエは、顔を向けるだけで、動く気配がなかった。


「微妙な反応だな。見せたくないのか?」


「ワフッ!」「ワンッ!」


 自身のステータスを見せたくないと、返事が返ってくる。

 

「じゃあ、ラメルが目覚めた時に見せてもらってもいいか?」


「ワフッ!」「ワンッ!」


 ラメルが目覚めた後なら良いらしい。

 理由は知らないが、俺を驚かせたいのかもしれない。

 

「今はいいか。その際宜しく頼むぞ!」


「ワフッ!」「ワンッ!」


 ついでにフロマとモルビエをワシャワシャして、モフモフを堪能した後、レヴィアに声を掛けられる。


「この後、稽古やるかの?それとも風呂かの?お主のご飯かの?」


「最後は、レヴィアの願望に聞こえたけど」


「そうじゃよ!全部でもよいのじゃが、どうするかの?」


「レヴィアの要望通り、ご飯作るよ」


「ホットケーキが良いのじゃ」


「おう、作って来る!作り終わった後は、稽古用の木刀作りたいから、素材もらえるか?」


「了解なのじゃ!」


 俺は、皆の分を作るために、キッチンへ向かい、ホットケーキを焼くのだった。

 食べ終えた後は、自分用の木刀作りを行い、その日の内に完成させたという。






 それから2週間、レヴィアと体術をしたり、ナイアと木刀で打ち合いをして、俺は順調に成長し、遂にレベル100に到達する。

 〈変幻自在〉のスキルで擬態したまま、様々なスキルを使いこなせる様になっていた。


「もうレベル100か!」


「む?レベル上限に達したかの?」「父様…変わっちゃうの?」


「そうだけど、まだ進化はしないな」


「寝静まる頃には、変化すると思うのじゃ!」


「それならいいか」


 俺はいつも通りの稽古の日課を終え、レヴィアとナイアと共に寝室で眠りに落ちる。


 レベル100になった日の夜、変化が起き、朝起きると種族が変化して、種族は、水神の守護鎧という名前になっており、レベル上限は500になっていた。

 試しに、〈変幻自在〉スキルで姿を変えた際、大人の姿に変われるだけで、外見の変化はほとんど無かったけどな。


 俺の姿を見て、レヴィアには、「そんなもんじゃよ!」と言われ、ナイアは、「父様成長しちゃ…嫌」と言われ、いつも通りの姿で過ごすにした。


 ラメルは、カプセルの中でスヤスヤと相変わらずである。

 フロマとモルビエは、ナイアと一緒に遊んだりするが、それ以外はラメルの子守りばかりだ。


 俺は旅立つ前までに、進化する事が出来たので、リビングで告げる事にした。


「俺は外の世界に行こうと思う。2日後には出発かな」


「もうそんな時期かのう。アメモが仕掛けてくるという事かの?」


「戦い…始まるの?」


「そうかもしれないな。アメモからは、1か月後に出会う人々は、必ず救うようにと言われてたから、1週間も無いってところかな。ついでに食材も欲しいしな!」


「事情を理解したのじゃ。カブトには、ワシからスキル付与するかの。カブトよ、ワシの所にくるのじゃ!」


「分かった!」


 俺とレヴィアがクッションから立ち上がると、レヴィアの顔が近づき、片手で俺のおでこに手をかざす。

 俺の頭に流れ込む感覚があった。


「何のスキル付与したんだ?」


「それはのう、この住み家に帰る為の〈帰還ホーム〉じゃよ!お主が自分の住み家だと認識してる場所に帰れるのじゃよ」


「〈帰還〉かぁ。帰ってきて元の場所に戻るスキルとかは?」


「…存在しないのう。ダンジョン内ならできるが、制限されるからのう」


「そうか…なら、緊急事態の時に使わせてもらうよ」


「うむ!いつでも帰って来て欲しいのじゃ!」


「私も…待ってる!…それか…召喚する手もあるよ!父様」


「ああ、なるべく帰るようにするよ。ナイアも外の世界見せたいから、必要な時以外も召喚してあげるぞ!」


「…約束だよ!」


 俺は、〈帰還〉のスキルをレヴィアにもらった後、旅立ちの準備を進めた。

 街や村に入る為の服装を隠すマントを作ったり、革靴を作ったり木刀を新調したりと準備をした。


 レヴィアに外に出た後の移動手段はどうするかと聞かれたが、時短するなら宝箱に装備しようと伝える。

 レヴィアとナイアには驚かれたが、宝箱だった時間の方が長いので、〈浮遊〉の速度は宝箱の方が早いし、宝箱を開くと大人が1人入るサイズなので、緊急時は、誰かを助けるなら宝箱に入れちまえという考えで行く。

 

 俺の正体がバレてしまうかもしれないが、命を救うのに躊躇いは無しだ。

 それで駄目なら〈帰還〉すればいいやと俺は思う。


 ちなみに、レヴィアはダンジョンの外について教えてくれた。

 レヴィアと出会った後に、ちらっと聞いたが、滅びた王都跡地らしい。

 今は瓦礫が自然に覆われている状態だという。

 外の見送りは、レヴィアが道案内を兼ねて行くと言っていた。


 俺は外に出る準備が整い、1日中、レヴィアとナイアと庭の湖に潜って、遊んだりして、温泉の階層に行ったり過ごした次の日、俺が旅立つときが来たのだった。



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