第25話 ナイアの木刀作り




 〈階層転移〉をして、水中ドームの階層に到着後…


「レヴィア!お前の父の刀を〈鑑定〉してみたいんだけど、時間貰ってもいいか?」


「うむ。ワシも父の刀が気になっていた所じゃ。〈鑑定〉してみると良いぞ!」


「おう!使ってみるわ」


 気になっていたレヴィアの父の刀を〈異空間収納〉から取り出す。


「刀から威圧されてるような気がするな。〈鑑定〉!」


蒼龍水斬そうりゅうすいざん

 攻撃力:100000 水龍族+500% 制作者:??? 

 スキル:〈水龍斬撃〉〈水龍斬〉


 俺は〈変幻自在〉で変身しているが、種族が違う上に、刀を鞘から引き抜いても恩恵が受けられない内容があった。


「お前の父の刀って、水龍族が使った場合、攻撃力が追加される恩恵があるらしいぞ。それにスキルもあるんだけど」


「なぬ!?」


 レヴィアは興味が湧いたようで確認していたが、俺から刀を取ろうとはしなかった。


「ふむ、確かにその通りじゃ。じゃがワシは、前にも言うたが刀は扱えぬ故、ワシの母の刀で十分じゃよ」


「そうだな。レヴィア個人としても強いから、それ以上強くなられたら困るけどな」


「カッカッカ。ワシは最強だからのう!」


 ナイアの方を見ると、刀を欲しそうにしている。


「ずるい…私も刀欲しい…」


「そうだったな。ナイアの分も用意する約束をしてたな。どのくらい時間かかるか分からないけど、悪いが稽古を回しにしてもらっていいか?」


「そうじゃの!なら先にナイア専用の木刀作りじゃな。カブトよ、〈刀工こうとう〉というスキルを取得してみるのじゃ!」


 俺は〈異空間収納〉に刀を仕舞った後、レヴィアに言われた通りスキル取得を行う。

 新たなスキル取得をしようとした際、他にも追加したいスキルを思い付く。


「よし!スキル取得〈刀工こうとう〉と〈彫師ほりし〉」


 倦怠感を感じたので、ステータスを確認し、二つのスキル取得を確認する。


「他のスキルも取得したようじゃの?カブトの考えは分からぬが、ナイアが満足できそうな木刀を作るのじゃぞ!」


「その為に取得したからな!」


 レヴィアは異空間に手を突っ込み、精霊樹の太い枝を取り出す。


「この大きさなら、刀が作れると思うのじゃ!」


「それぐらいあれば、確かに作れそうだな」


 レヴィアは軽々と尻尾サイズの枝を持っていたが、受け取ると普通に重かった。


「おっもい。これナイアは持てるのか?」


「加工していけば、軽くなるであろう。出来なければ、ナイアを不機嫌にさせる事になるかものう!」


「父様…頑張って!」


「おう!丹精込めて作ってやるからな!」


 俺は座りながら左手で枝を支え、ナイアに合う木刀の作成に入る。


「やっていくか!〈刀工〉」


 スキルを発動すると、俺の右手にマナが集中し始める。

 マナが灯った中指と人差し指でなぞってみると、皮が簡単に削れる。

 

 集中し始めた俺は、時間を忘れて木刀の形にしていく。

 真剣に削り続け、綺麗な反りのある木の棒を完成させる。


「すぅ~はぁぁ~。想像以上に、マナを持っていかれるけど、作る楽しさが勝ったな!ナイアどうだ?」


 俺はナイアに木の棒を渡して、確認を取った。


「ちょっと…重いかも?…このまま…削れば平気」


「おう、分かった。ならこのまま形にしていくわ」


 ナイアから木の棒を返してもらい、続きをやろうとすると、頭がくらっとした。

 ステータスを確認すると、自身のマナが2万程あるうち5000まで下回っている。

 気付いた時には、俺の背中からレヴィアが支えて耳元で囁く。


「マナが無くなりそうなら、お主の背から供給させるかの?」


「たぶん仕上げまで足りないから、お願いするよ」


 レヴィアは俺の背に手を当ててマナを流してくると、気持ち良くなった。

 電気マッサージを受けている感じに近く、数分も経たずにマナが満タンになる。


「レヴィア、もう満タンだから離れて大丈夫だ。レヴィアさん?」


 俺から離れようとしなかった。


「そのまま続けるのじゃ!その方が問題なかろう!」


「べたべたされると逆に集中できないから、離れてくれ」


「…母様!父様…邪魔しちゃ…めっだよ!」


「分かったのじゃ…」


 レヴィアは残念そうな顔をして、俺から離れ、ナイアと一緒に座り込む。

 俺も落ち着いた所で、作業を進める。


「さて、もう少しだな!〈刀工〉」


 木刀がほぼ完成した頃。

 気付くとナイアは、レヴィアの膝枕されてスゥースゥー眠っていた。

 俺はレヴィアと目と合わせると、シーっと静かにするように合図する。

 辺りが暗くなり始めたので、レヴィアは小声で「今日は戻るかのう」と言い、俺は頷いて木刀を〈異空間収納〉に仕舞った。

 

 レヴィアはナイアを抱えた後、共に住み家へ〈階層転移〉して戻ると、辺りは暗かったが、精霊樹の周りには無数の色蛍が漂っていた。


「今日中にナイアの木刀を完成させたいんだけど、庭で続きやっててもいいか?」


「夢中になるのは良いが、無理はするでないぞ?」


「ああ、肝に銘じておくよ」


 ナイアを抱えたレヴィアを見送り、外で続きをする。


「さて、刀身の彫刻どうしようかな…ああ、そうだ!あれにしよう!」


 刀身にどんな彫刻をするか決め、住み家の大樹の根元部分に座り込み、〈異空間収納〉から木刀を取り出した。

 俺は〈彫師〉を発動すると、右手の人差し指にマナが集中したのを確認し、刀身に触れる。


「指でなぞると簡単に刻めるし、絵柄も描けそうだな」


 俺は、レヴィアの龍の姿を彷彿させる絵柄を描き続け、鱗に拘っていたら、辺りが明るくなり始めていた。


「ふはぁー。よし、出来た!気に入ってくれるといいな。今日はリビングで寝るかな」


 木刀を〈異空間収納〉に仕舞ってから、フラフラとした足つきで、住み家のドアへ向かいリビングに入室した後、クッションにダイブする様に力尽きたのだった。



  



 レヴィアとナイアは、一緒に目覚めると、リビングにて、クッションに埋もれているカブトの姿を発見する。


「人形の姿に戻っておるのう。よっぽど疲れているようじゃの」


「私の刀…出来たのかな?」


「完成しておると思うのじゃが、起きるまでゆっくりさせようぞ」


「うん!今日は…母様と一緒にダンジョン…見たい!」


「分かったのじゃ!ワシは、露天風呂がある階層で、カタログから探そうと思っておる。ナイアよ、一緒に探すかのう!」


 レヴィアは、いつも通り椅子に座り、ナイアを膝の上に座らせ、ダンジョンモニターを操作し始める。

 ホムの襲来以降、ダンジョンの変化が無いので、露天風呂がある階層で設備を追加するために、カタログページを開く。


「ナイアは、カタログを見て何か気になる物はあるかの?」


「大きい桶…気になるかも」


「ふむ。消費マナも少ないし追加しとくかの」


「これ…気になる!」


「これは、小さな滝かの?まあ、追加しておくかのう」


 露天風呂の階層に設備を追加したりして、一緒に楽しんだ後、あっという間に増設が完了する。


「これで、また行く日が楽しみになったのう」


「父様…喜ぶといいね!」


 レヴィアとナイアは、階層を別の所を映し、いつも通り変化が無いか確認する作業に戻り、暇を潰し、昼を過ぎた後に、カブトは起き上がった。


「あれ?〈変幻自在〉が解除されてるな。無理し過ぎたかな」


 俺は再度〈変幻自在〉を使用し、姿を変える。

 それに気づいてナイアとレヴィアが近づいて来た。


「起きたかの?大丈夫かの?」「父様…大丈夫?」


「大丈夫だ。ナイアの木刀完成したぞ」


 俺は〈異空間収納〉から木刀を取り出した。


「わぁ…!きれい!」


「芸術品じゃのう。刀身の模様は、ワシの龍化がモデルじゃな」


「ナイアに渡す前に確認したい。〈鑑定〉」


水龍樹木刀スイリュウジュモクトウ

攻撃力:5000  水属性+1000% 制作者:黒兜


 切れ味は無さそうなので、打撃に強そうだ。

 追加効果で、ナイアと相性良さそうな性能だった。

 俺は両手に抱えながら、ナイアに木刀を渡す。


「父様…ありがとう!」


「これでナイアとも稽古が出来るのう!」


「参加して…いいの?」


「カブトが相手してくれるじゃろう!」


「それはありがたいな。ナイア、一緒に強くなろうな!」


「うん…!」


 後日の稽古にて、ナイアと木刀を使った打ち込みが追加されることが決まり、ナイアは嬉しそうにしており、その姿に俺は、満足するのだった。


  

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