第18話 託された子への誓い/スキル探し

 



 ナイアは、フロマとモルビエ共に、住み家を支えられている木の上の方に遊びに行っている。

 妹の為にプレゼントしたい物があるのだろう。

 

 俺とレヴィアと二人っきりになったので、赤ん坊になったラメルを眺め堪能しながら、俺はラメルの事を〈鑑定〉で調べた。


 

【ラメル】


 種族:炎龍森人サラドラー

 レベル:1

 体力:1000

 攻撃力:1000

 防御力:1000

 魔力:10000

 俊敏力:5000

 幸運値:100

 マナ:5000/5000


 

 〈鑑定〉がLv5あるのに、情報が名前とステータスしか引き出せない。

 レヴィアの時と同じだ。

 ラメルはレベル上限が無いので、レヴィアと同じ上位の進化を遂げた存在なのだろう。

 スキルと称号が見れば、他に何か情報が分かるのと思ったのだが、今の俺には無理らしい。

 遊戯の神のアメモに聞いてもはぐらかして教えてくれなそう。


 ナイアの場合は、〈眷属召喚〉として契約しているので、ステータス見せてくれそうなので、後で聞いてみる。

 俺とレヴィアは、可愛いラメルを眺めながら、話を始めた。

 

「ラメルは、不思議な種族名をしてるな」


「そうじゃの…種族に炎龍と付く時点で、セキという者と同じ種族で驚いたのじゃ。ワシと同世代のダンジョンコアであり、親友でもある。しかしじゃ、この子を見ると、同系統の眷属が森人と混ぜれ、偶然にも生まれたと捉えるべきであろうな」


「そうなのか…レヴィアの親友のセキっていう奴は、生きているのか?」


「もうこの世には居らぬよ。五百年前に世代替わりをしてる故な。セキの眷属の名は確か…ホムという名前だったと思うがの」


 ホムは、ダンジョン攻略された後の末路だったのかもしれない。

 アメモが言っていた、ある国で研究で混ぜられた後に何かしら理由で解き放たれ、親友の子とレヴィアを戦わせるシナリオが思い浮かぶ。

 レヴィアが負ける未来は見えないが、予想外な展開が起こった可能性が高い。

 俺があの時、戦って本当に良かったと思っている。


「俺が昨日戦った奴は、ホムと名乗ってたぞ。」


「お主…ホムと言ったか…」


 レヴィアの顔色が優れない。


「大丈夫か?」


「心配いらぬ…お主が戦っていた時、最後に何と言っていた?」


「楽しかったわと言っていたな」


「カブトよ、戦ってくれてありがとのう。…本当に馬鹿者じゃ。親子揃って同じ最期かの…。予想はしておったが、連絡する意味も無くなってしまったわい」


「そのダンジョンはもう無いってか?」


「そういう意味になるのう…」


レヴィアは、複雑な表情をしていたが、口を開く。

 

「じゃが、ホムはラメルをワシらに託した意味とも受け取れる。この子はワシらと共に大事に育てるのじゃ!」


「そうだな、俺も同意見だ。大きくなるまで見届けてやるさ!」


 俺とレヴィアは、ラメルの成長を見届けようと誓い合った。

 少し時間が経った後、ナイア達が戻ってきた。


「父様!母様!ラメル…ただいま!」


「ワフッ!」「ワンッ!」 


「おかえり!」「おかえりなのじゃ!」


 ナイアの腕の中には、桜の花びらが咲いた枝ものを抱えていた。

 レヴィアは、枝ものを見て懐かしむような顔をした。 


「綺麗な花だな!まるでラメルに似合う花だ」


「ナイアよ。その花はフレイムベリーではないか!ラメルの為に持ってきたのかの?」


「うん!…此処の上の住人さんが、持って行ってと…渡されたの!」


「此処にはワシら以外いないはずじゃ…まあ良い!近くの棚に飾るとするかの!ナイアよ、その花を一旦預けてくれるかの?」


「うん…!」


 レヴィアはフレイムベリーの枝ものを受け取り、長い花瓶に入れ、壁棚の上に飾り、小さく呟いた。


「良い物じゃのう。セキちゃん…ラメルを暖かく見守ってな」


 レヴィア以外ラメルに夢中で、その声は周りには聞こえていなかった。


 住み家の窓の外から、亡霊らしき龍人が呟いていた。


『レヴィアはちーっとも変わらねえな。お前も男が出来て、メスになっちまったか。まあ、私の孫を宜しく頼むぜ親友…って言っても届かないよな!ダチを一目見れたし、さっさと還るか!』


「窓の方から男勝りな女性の声?気のせいか?」


 俺は寒気と暖かさを感じ不思議に思っていたという。







 その後、俺は新たな家族が増えた記念にホットケーキを振舞った。

 毎日が濃すぎて、作るのも久々に思えたが、俺の家族は、食べなくても生きていけるので、ある意味娯楽ではある。

 同じものしか作れず、申し訳なく思っているけど。


「カブトとのホットケーキはワシの楽しみになりつつあるのう。本当に美味しかったのじゃ!」


「うん!…父様のホットケーキ美味しい!」


「ワンッ!」「ワフッ!」


 皆が満足している所を俺は、宣言する。


「それはよかった。けど皆に伝えたい事がある!俺は、もっと他の料理が作りたい。けど俺は、材料が不足していて、他の料理が作れない。だから外に旅に出掛けて、他の料理と材料を探そうと思ってるんだが、どうだ?」


「…良いと思う!」「ワフッ!」「ワンッ!」


「良い提案じゃのう。じゃが、ワシのダンジョンの外は、廃墟と化してる上に、時が経ちすぎて、他の情勢は把握しておらぬ。お主が言うなら、行ってみる価値はあるかものう」


「なら決まりだな!あと、世界中のダンジョンに食用のダンジョンってあるのか?」


「ワシは知らぬのう。あるかもしれんが、ワシの所では限られた物しか無理じゃのう」


「分かったよ。俺が思い付く範囲で何とかする」


「期待しているぞ!それと、いずれか外に出る準備の対策は済ませてるかの?」


「これからだよ。スキルポイントが余ってるから今日は取得できそうなスキルを探したい」


「ふむ。今日の稽古する前に、時間取るとするかの」


「おう、頼む!その前に片付けだな」


 俺は、皆の皿を回収し、調理器具と皿を〈洗浄〉して片づけた。

 その間にレヴィアは、ダンジョンモニターとキーボードで破壊された階層の修復を行っており、終わり次第、稽古の時間になりそうだ。


 俺はラメルの所にいるナイアに声を掛けた。


「ナイア!時間あるか?」


「うん…大丈夫だけど?」


「ナイアのステータスってまだ一度も見たことないんだが、見せてもらってもいいか?」


「父様なら…いいけど。私そんなに…強くないよ?」


「大丈夫だ!ナイアの事もっと知ってあげなきゃなって思っただけだから!」


「うん…わかった」


 ナイアは、「素直に見せてって…言えばいいのに…」と呟かれながら、俺に向かってステータスを表示させた。



 【ナイア】


 種族:水神の眷属

 レベル:6/1000

 体力:160000

 攻撃力:160000

 防御力:160000

 魔力:260000

 俊敏力:160000

 幸運値:1500

 マナ:360000/360000


 スキルポイント:5

 スキル:〈自動マナ回復〉〈異空間収納〉〈エール〉

 スキルレベル:〈戦闘水人形バトルウォータードール〉Lv3

 称号:水神の子、水龍の愛娘、契約者


 レヴィアとラメルと違って、スキルポイント以下も見ることができた。

 俺がいつも頼んでいる仮の身体は〈戦闘水人形バトルウォータードール〉というスキルだったらしい。

  〈戦闘水人形バトルウォータードール〉有りでもステータスは、ナイアの方が十分強いなぁ…

 

 生成系の専用スキルの可能性が高いので、スキル取得は出来ないと思っているが一応試してみる。


「ナイアのお陰で、検証できそうだ!ありがとう」


「どういたしまして…!」


 ナイアに礼として、頭を優しく撫でた後、スキル取得を行ってみた。

 予想は付いているけど、試しだ。


「スキル取得!〈戦闘水人形バトルウォータードール〉」


 しかし何も起こらなかった。


「じゃあ、スキル取得〈ダミー人形ドール〉」


 また空振り。


「…スキル取得〈属性付与〉」


 何も起こらない。


「……スキル取得〈障壁〉」


 体からマナが失われた感覚が来た。

 この瞬間、条件無しで取得できる種類が俺の中で予想できた。

 俺のスキル取得の種類は、操作や補助と防御系統スキル、生活系スキルを中心。

 後は特殊だが、俺の前世で経験したスキル等が挙げられる。

 

 レヴィアの稽古で追加されたスキルは、伝授系統の部類になると考えられるが、何か夢の中で起こった事が引っかかる。

 そして、〈水槍ウォータースピア〉が取得できた理由が、体術の稽古で条件が解放されたか、或いは前世で、10代の頃に数年だけ槍術の稽古を祖母から習ったぐらい。


 俺の前世も条件に当て嵌るかもしれないと、試してみた。


「スキル取得〈槍術〉」

 

 マナが失われたのだ。心の中で、前世の祖母に感謝する。

 前世の事が関連していると確信を持ち、俺は涙していた。

 

「父様…元気出して?…ナデナデ」


 気づけばスキル取得に失敗し、俺が落ち込んでると思われ、ナイアに頭を撫でられていたという。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る