第17話 神界の図書館と新たな家族


 


 夢の中だな、最近多いな…


 遊戯の神アメモから俺が創造された関係で、毎度夢の中へ連れて来られている可能性がある。

 今回は予想が出来る。

悪戯イベントの一つをクリアした事だろう。


 何もない真っ白い空間だった。

 前に進むと霧が晴れ、俺の目の前に図書館のドアが開かれる。

 ドアは、早く入れと言っているかの様に、キコキコ揺れていた。


「入れって事だろう。分かった分かった…」

 

 俺が進んだ先には、遊戯のアメモが座って本を読んでいた。

 それに気づいて、満面な笑みをする。

 アメモの笑みは、俺にとって拒絶反応を起こした。


「やあ!調子はどう元気?ってボクを嫌そうな顔して見ないでくれる?」


「顔に出てたか、ってごめんごめん!元気だよ!」


「もうっ!カブト君が来てくれるの、楽しみにしてたんだからね!」


「俺はお前の彼氏になった覚えはない!」


「違うそうじゃない!はぁ…調子狂うなぁ」


 アメモと話してると、恋愛ゲームをしている感覚になる。

 定番すぎる会話だから、しょうがないじゃないか…

 好感度を上げた覚えは、俺には無い。

 

 俺が席に座った後は、互いにため息をついた。


「アハハッ!ボクとカブト君のため息ピッタリだ!笑っちゃうよ!」 


 何故かツボに入っている。

 茶番に付き合っていたのは、お互い様だ。


「さて、本題に入ろうか!」


「おう、本題聞かせてくれ!」


「いい返事だね!っとその前にまずは、紅茶を楽しもう!」


 アメモは右肩の上で手を2度叩いた後、テーブル上に紅茶を召喚した。


「その紅茶は、特別製でね。君の新たなスキルが取得できるよ!戻ってからのお楽しみだよ?」


「新たなスキルか。想像出来ないな。期待しないでおくわ」


「君の為に作ったものだから、期待してくれていいのに!」


 アメモはわざとらしく頬を膨らます。

 俺は気にせず、紅茶を一口頂いた。


「この紅茶美味しいな。爽やかで甘い味だな!」


「でしょでしょ?ボクのお気に入りのフルーツティーなんだー!」


「意外と良いセンスしてるな。これに合うお菓子があれば最高だった」


「今回はお菓子は無いんだ…そゆことで、紅茶で許してねー!」


「いいけどさ、そろそろ本題に入ってくれ!」 


 アメモは一瞬で忘れてた顔をしていた。


「はいはい、本題入るね!…ボクの第一試練撃破おめでとう!パチパチパチ―!」


 アメモがとてもわざとらしい拍手だった。

 俺はアメモが仕向けた悪戯だと、レヴィアに言われていたからな。


「レヴィアがお前の事だろうって、言ってたぞ」


「流石はレヴィアちゃんだ!やっぱ、察しが良いなー!それで…君を戦わせた訳だ」


「ホムとの戦いは、楽しかったぞ!俺も自分の実力を知る事ができたしな」


「カブト君は、戦闘狂なのかな?まあいいや、それは良かった!それと、ホムちゃんを救ってくれてありがとう。ボクからも礼を言うよ!本来あの子の運命は、世界を破壊尽くした後に倒されて、終わりだったからね」


 頭を下げながら、俺に感謝を伝えてきた。

 俺は、アメモが素直に礼をする事に不思議に思った。

 世界を破壊尽くすとか物騒だ。

 そして、レヴィアを倒す手段があったのだろうかと、謎が深まるばかりだが、今は考えても仕方ない。


「礼はいいよ。てか、ホムの親は誰なんだ?知っているなら教えてくれ!」


「その礼にだけど、ホムちゃんの事について教えてあげる!時間が無いから言うけど、ホムの親はセキちゃんの炎龍の眷属かな。とある国の研究で、混ぜられちゃってね。救い様がなかったんだ。詳しくは…レヴィアちゃんに聞いてくれた方が早いかもね」


 セキちゃんか…戻ったらレヴィアに聞いてみよう。


「ああ、教えてくれてありがとう!」


 俺の身体は、段々と透明になっていく。


「満足してくれて何よりだよ!あとね、今回はボクからの遊びの相談事は無しだけど、次の悪戯のヒントを教えておくよ!今から1か月後に出会う人々は必ず救うようにしてね!」


「ありがとう、心得ておくよ!」


 そして俺は、アメモを残して消えるのであった。

 残ったアメモは、独り言のように呟く。


「君との時間は、本当にあっという間だ。もっと君と過ごしたいな…けど、レヴィアと結ばれるのが、君の幸せだ。でも君はボクと賭けてしまった。どんな結末を迎えるんだろうね?楽しみで仕方がないな、本当に…」


 恋する乙女の様な表情をしながら、アメモは残った紅茶に口を付けたのだった。

 その紅茶はどちらが飲んだ紅茶かは、言うまでもないだろう。






 気付くと見慣れた寝室だった。

 隣を見ると、レヴィアが眠っている。

 今回は裸ではなく、前に作ったシルクの長袖パジャマを着ており、俺の身体に手を置いて、向かい合う形で寝ていた。


「はぁ…良かった。スキルが気になるけど、確認は後にするか。今はレヴィアとの時間をゆっくりしよう…」


 俺はレヴィアの寝顔を堪能していたが、それも1か月もしない内にお預けになるかもしれない。

 外の世界に旅立つと、前々からレヴィアに伝えてたが、いざ予定が決まると寂しく感じる。

 話す事が多い、次の悪戯のヒントの事とか色々と。

 レヴィアの手と一緒に、胸の所まで身体を寄せると、それに応じる様に俺を抱き寄せた。 


「起きたかの?お主の身体の温もりは心地よいな」


「俺もだ。レヴィアと一緒に居られてとても幸せだ」


 俺の反応に、レヴィアはクスっと笑った。


「そういえば、あの娘はどうなった?」


「赤ん坊になってから、ずっと寝ておるの」


「大丈夫なのか?」


「心配ない。1か月もしない内に目覚めるであろうし、ナイアが付き添っておる。妹が出来たと、はしゃいでおったぞ」


 住み家に入った後の光景を見ていないが、想像が出来る。

 ナイアはあの時、俺から任された後、とても嬉しかっただろう。


「その日の内に、こんな結果になるなんて思いもしなかったよ」


「そうじゃな…あの娘については、ちと心当たりがあっての、連絡できるか試してみようと思うのじゃ」


「そうか。その前にレヴィアに話しておきたいから時間取れるか?」


「うむ。わかったのじゃ」


 そうして話している内に、窓の外が段々と明るくなってきた。


「日が昇るのう、起きるかの」


「起きようか…色々確認したいからな」


 俺とレヴィアはベットから起き上がり、リビングへ足を進めた。







 リビングに来ると、絨毯にベビー用のクッションマットのカプセルがあり、ホムだった赤ん坊はその中で、すやすや眠っていた。

 すぐ傍で、カプセルに寄りかかるナイアがおり、その周りをフロマとモルビエが寄り伏せて眠っていた。


 俺とレヴィアは、その光景にニヤけてしまった。


「カブトよ、お主も同じ事考えておらぬか?」


「そうかもしれない…この光景を収めたいな…」


 レヴィアは、異空間に手を突っ込み、高そうなカメラを取り出した。


「カメラあるのか!?」


「ワシのダンジョン特権じゃ。思い出を残すのも容易い!おっと、声を静めなければならぬのぅ」


 ナイア達の光景を静かに撮影して、俺とレヴィアは堪能し、二人だけの写真も撮ったのも秘密だ。

 時間が経つと、ナイアと一緒にフロマとモルビエは目を覚ます。 


「父様…母様…おはよう」


「おう、おはよう!」「おはようなのじゃ!」


「あのね…この赤ちゃんの名前…決まっているの?」


 ナイアの質問に、俺とレヴィアは顔を合わせたが、レヴィアは残念そうな顔で首を振った。

 名を失ったという事だろう。

 俺はそれを察して、ナイアに言葉を返した。


「いいや、決まってないんだ。ナイアは、妹の名前を決めたのか?」


「えっと…ラメル…がいいです!」

 

 ラメルか…どこかの言葉で破片っていう意味だったよな。

 ナイアがその名前がいいと言ったら、それでいいのだろう。


「いい名だな!レヴィアもそう思わないか?」


「うむ、良い名じゃな!この子の名前は、今からラメルじゃ!」


「やった!私の…妹。ラメルちゃん…宜しくね」


「ワフッ!」「ワンッ!」


 そうして、新たな名前を授かったラメルは、家族として迎えられ、数年先の未来で、ナイアと共に更なる成長を遂げる事になる。

 その際の俺は、「強過ぎだろ!」と反応をする事になるとは知らず。

 


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