第13話 告白と稽古


 


 パンケーキで甘々な雰囲気になった俺とレヴィアは、ツリーハウスの住み家から下った所にある、透き通った水辺に浸かる木の根に、レヴィアは座り込む。

 俺はレヴィアの腕の中から心臓がバクバクしてるのが伝わってきた。

 先に口を開いたのは俺だった。


「レヴィア…落ち着かないか?」


「落ち着かんわ、馬鹿…」


 レヴィアさんは相当、顔が真っ赤なままだ。

 俺が話さないと、会話が続かない。

 外へ旅立つ予定の話を進めようとしたが、今ではない気がする。

 これは、告白イベントと言うべきであろう。

 展開が早すぎる気がするが、そっち方向で話を進める事にした。


「俺さ…レヴィアと出会ってからまだ日が浅いのは分かってるけどさ、俺はレヴィアの事は、大切な家族だと思い始めてる。稽古相手になってくれる礼に、返せたらいいなーってな」


「うん…」


「レヴィアと出会えて良かったと思ってるよ、それでもまだ3日だけどな」


「うん…そうじゃな」


「俺はレヴィアの強さには、まだまだ遠く及ばない。身体だって人形だ」


「それはそうじゃ…お主の本体は、防具に宿ってる自我じゃからの…」


 俺は、レヴィアの会話を止めないよう思考を加速させる。


「防具に生まれたからこそ、意味があると思う。この関係だって、遊戯の神が見たら驚くだろうよ」


「成程のう。本来ならお節介な話じゃが、この出会いは、ワシにとっても予想外だったわい。カブトが防具なら、ワシを守る為には、千年以上かかるかも知らんぞ?」


「かもしれないな!お互い寿命なんてないだろう?」


「そうじゃのう、誰かに倒されなければ、ずっとじゃな!」


 レヴィアは笑顔になって、調子を取り戻してきたみたいだ。


「家族とずっと一緒に居るためにも、俺は成長を続ける!」


「そうしてもらわないと、ワシも困るわい」


「だから、これだけは言わせてほしい。レヴィアが好きだ。これからも宜しくお願いするよ」


「不意打ち過ぎるのじゃ!!!」


 レヴィアは声を荒上げて、また顔を赤くしてしまう。

 

 流石に、いきなり好きはダメだったか?

 でも、関係はハッキリしておく必要があるし、レヴィアの期待してるなら、応える方がマシだろう。

 稽古という俺の鍛錬相手として、十分過ぎるし、返しても全然足りない気がすると考えながら俺は沈黙してしまった。

 

 その沈黙を破るように、レヴィアは深呼吸をした。


「ふぅ…。カブトよ。ワシは二千年以上生きておるが、このドキドキが初めてでの。生きている時間が長過ぎて、永遠に恋心が叶わぬと思っていたのじゃ。じゃが、カブトの言葉を聞けて、とても嬉しいぞ。ワシからも宜しく頼もう」


 レヴィアの言葉が終わった瞬間、俺の小人の身体を持ち上げたと思えば、俺の頬に柔らかいレヴィアの唇の感触が当たる。

 レヴィアはゆっくりと唇を離していく。


「すまぬ…我慢できなくなってしまったわい…」


 レヴィアは、俺を大樹の根にゆっくり下ろし、パーカーに付いている帽子を両手で顔を隠し、深く被った。


「ダイジョウブ…ダヨ」


 返した言葉は、それが限界だった。

 初心だった俺は、顔を赤色に染めながら頑張ったはずだ。

 少し時間が経った後、レヴィアから声を掛けられる。


「はぁ…。なんだか胸のモヤモヤもすっきりした気分じゃ。そろそろ戻ろうかの、カブトよ」


「そうだな。ナイアも心配するだろうしな!」


 俺はレヴィアの腕に抱かれながら、戻るのであった。







 レヴィアと俺の距離がより一層縮まった。

 その夜、クッションの上で寝る時は、ナイアも一緒だが、レヴィアが腕に抱いて独占する。


「母様、父様…おやすみ…」


「おやすみなのじゃ!」「おう、おやすみ」


 レヴィアの腕の中で抱かれながら眠った。

 その間、俺のレベルが上がるし、とても幸せだ。

 ホットケーキを作る前にレヴィアに食べ物の話で、心臓石の説明を聞いた通り、俺がレヴィアのマナを吸っているのだろう。


「レヴィア、一緒に寝てくれるのはありがたいが、大丈夫なのか?」

 

「気にせずとも良い。お主が成長するならば、いくらでも一緒に寝てやるぞ。マナ回復など、お主の数百万倍回復が早いからの」 


 俺が今日の事を振り返ってる間に、レヴィアは自然に眠りに付く。

 レヴィアが寝ている間、俺が気にしたのは、色気のある声を発していた。

 色気の声は小さいので、目が覚める程ではないのだが、俺はドキッとしてしまう。

 これからずっと続くとなると、レヴィアより先に眠るしかないだろう。


 気づけば俺は目が覚めた。俺はレヴィアを起こさないように腕から抜け出す。


「すぅーふぅー」

 

 寝息を立てるレヴィアの寝顔は、前世では見ない程、綺麗な顔をしている。


「それにしても、寝ている姿も綺麗だな…」


 パーカーとショートパンツの恰好で寝ているので、前世と変わらない日常風景な気がして、異世界だと忘れそうになる。

 俺はレヴィアの服を見てから、これからも着る服の種類を増やそうと思った。


「先に目が覚めちゃったし、今度は、寝間着や運動着とか作ってみるか…睡眠の邪魔をしない程度に、離れた所で作業しようっと」

 

 俺は〈裁縫〉を発動し、先に寝間着を作り始めた。


「今回は森林蜘蛛フォレストスパイダーの糸で、パジャマを作ろう。シルク布っぽいから相性良さそうだな。昨日作った長毛種の羊毛布も残ってるし、長袖がいいかもな、後はストレートパンツもセットだな」


 夢中になった俺は〈裁縫〉スピードが上がったていたので、あっという間に完成させる。


「レヴィアとナイアの分…上出来だな。起きたら着てもらうとするか。一応、フロマとモルビエの首に巻くスカーフもすぐできそうだな」

 

 すぐに取り掛かり、全て完成させた後は、宝箱に仕舞った。

 数刻後、レヴィアとナイアは起きてきた後…


「カブトよ、おはよう」「おはよう…父様!」


「おう!起きたか!昨日に引き続き、着て欲しいのがあるんだがいいか?」


「また作ったのかの?着てやるわい。」「父様…着る!」


「ワフッ!」「ワン!」


「分かった!今日はな…フロマとモルビエのスカーフもあるぞ!」

 

 そうして、俺の新たな1日が始まるのであった。







 本日のレヴィアとナイアの服装は、長袖パーカーとショートパンツスタイルだ。

 母と娘が揃って最高だった。

 服のセットで、革靴みたいなスポーツシューズ作ってある。

 ちなみに寝ている間に、足のサイズを調べたのは内緒。


「異界の服は、着心地が本当に良いのう。この靴もワシの足のサイズに合わせて履けるし、部屋で行動するのには持ってこいだのう。さて、今日も始めるとするかの?カブトよ!」


「気に入ってくれて何よりだ。今日もお願いする!ナイア仮の身体を頼む!」


「うん!…任せて」


 ナイアに召喚された仮の身体に〈変形装着〉を行った後、レヴィアから説明を受ける。

 

「本日は、ワシの体術を受け止めながら躱す稽古じゃ!お主の戦える身体の弱点は攻撃に当たる事じゃからの。お主の防御力があっても無駄な事だからの」


「つまり、反射神経を強くしろって事だな!」


「うむ。お主が今使っている身体は、切札という最終手段である上、使った後の反動もあるからのぅ。カブトよ、構えよ!」


 俺はレヴィアと一定の距離を取って構える。


「お願いします!」


「蹴りと殴りを受け流してみせよ!」


 俺は、神経を研ぎ澄まし、レヴィアの拳を受け止め、蹴りは躱す事に専念した。

 反射神経が弱い俺は、何度か攻撃を食らいながらも続けた。

 手加減されているので、30分程続いた後、ピキっと腕に亀裂が入る。


「…そこまでにしようかの。十分持ったほうじゃな」


「はぁ…はぁ…はぁ…もう駄目だ。ナイアこっちに来てくれ!俺は人形に戻る…」


「父様!大丈夫…?」


「ああ、何とかな…」


 レヴィアの体術は、動きが軽やかで鋭い。

 攻撃に当たると相当痛かったので、俺の内心は必死だった。

 攻撃を受け流し、ダメージを最低限に抑える課題を今後は、1時間持つように目標を立てる。


 少し経つと俺は気絶してしまい、レヴィアに抱えられて〈階層転移〉で住み家に戻るのだった。



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