第4話 スキル確認と検証



 新たなスキル〈スキル図鑑〉に関して、将来性のあるスキルだと俺は考えている。

 情報は自身の命と同じく大切だし、スキルの使い方によって、有利な状況が作れると思っている。

 

 今のところ、マナの管理を徹底しているので、マナを底に尽きた事はないが、〈スキル図鑑〉のお陰で、マナの消費に関する記載があった。

 疲労感と倦怠感があるのは、〈スキル図鑑〉の記載がされていたので、大体予想ができ、恐らくは気絶するだろうと事が分かったのは、良い情報だった。


 次に、〈鑑定〉を有効活用する事だ。

 ダンジョン内は、知らない事がたくさんあるし、鑑定は様々な物を調べることが可能だが、中途半端にしか見れない相手もいると思う。

 少しでも見れれば情報戦では、戦術の選択肢が広がるし、危ない相手なら判断を誤らないとも言える。

 もし此処で〈鑑定〉を使う場面が少なくても、外に行けばいくらでも使える場面は出て来るだろうと、俺は考える。


 現在の俺は、成長するためにダンジョン攻略するか、或いは一旦脱出を図るか迷っている最中だ。

 時間はいくらでもあるので、目先の事を優先的に考える。

 階層の探索を続けて、出口がなかった場合は、攻略一択にする。

 

 行きつく先は、どちらにしても成長するって事だ。


 現在の成長手段としては、狼達も居るので、レベルアップもすぐだろうし、次のスキルの取得は、〈異空間収納〉を取ろうと思っている。

 散策を続ければ、宝箱に出会うかもしれないし、討伐等でアイテムの所持が増え続けるだろう。


 俺の選択は、良い方向に続いているが、いずれは引っ掛かる日が来るだろう。

 最初から使えなかった、〈マリオネット〉も然り。

 自身が思い付かないスキル等は、〈鑑定〉すれば、いずれ見つけられるだろうし、今後は、遠慮なくスキル取得できるように、スキルポイントの貯金を続けるつもりだ。





 俺は今、宝箱になっている。

 別に装備先が恋しい訳でもない。

 〈浮遊〉をして空から〈マップ探知〉をしたいと思っているのと、此処が本当にダンジョンなのか調べたいので、空飛ぶ宝箱状態になっているだけ。


 空中から見る景色は綺麗だが、俺にとってドローン操作と同じ事だ。

 空中にいて、万が一がある。

 狼に装備して空を飛んだ場合、猛禽類の魔獣の対処ができないと思う。

 今は、そんな魔獣が居ないので安心しているけどな。


 移動スキルを鍛えた宝箱なら、急に落下して地面に衝突しても防御力で平気だと願うばかりだ。


 そうして俺は、行ける高度まで上がり切った後、ゴーンっと天井にぶち当たった。


『どうやら、見えない天井があるみたいだ。ドーム状で空の景色は続いているが、壁がある感じだな。ダンジョンで確定だな。ってか、見渡す限り広大だなぁー』


 この階層に定住するのであれば楽しそうだが、いつまでも居座るつもりはない。

 もっと他へ冒険がしたいっていう探求心が俺には大きい。

 

 ファンタジー世界に生まれたからには、冒険がしたい。

 鎧に魔法が使えるか、さだかではないが、ステータスを見る限り、魔法スキルがあるだろうと思う。

 俺が使える魔法スキルがあるかは、不明だけどな。


 俺は〈マップ探知〉スキルを使って空中散歩を続ける。

 ダンジョンの確証が得られたので、空中から他の階層への道探しを中心に行動中だ。

 見渡す限り、木が生い茂っており、切り開けた場所はまだ見つかっていない。

  

『赤い点滅は複数あるけど、樹海のせいでほぼ地面が見えないな』


 上から見てもとても緑で、空中からの視界は悪かった。

 敵の姿も見えず、何が居るのか、結局は判らないまま。

 今回は空中散歩の為、狼達は連れて来ていないし、戦闘ができない。

 諦めて別の場所に移り、移動して行く内に、岩崖を発見して洞窟らしい場所を確認する。


『こんな所があったのか。移動距離があるな…』


 散策している間は、岩山らしい所は、他になかった。

 此処がボスエネミーに繋がる洞窟だろう。

 俺は、次の階層を進める場所だと判断したが、マップ探知で確認したところ、洞窟内の先は、紫色に点滅している反応があった。


『紫の点滅は階層主の可能性が大きいな。まだ挑むつもりもないけどな』


 どんな階層主か、この目で確認できないけど、今のレベルが50に届いた後に、挑戦したいと思う。

 階層主にどのような反応をされるか俺は、鎧だから想像できないけどな。

 新たな発見ができたので、俺は満足げに元の場所に帰るのであったのだが…


「ワシの所に来ぬ選択をしたかの。ならば、強化魔獣を召喚するかの」


 とある住み家で、椅子に座り込んで、俺の姿を見ていたなんてその時、知る由もなかったという。





 俺は、自身の居場所に戻ってきた後は、狼達の変化が無いか見たが、操られたままなので大人しい。

 離れていても効果は発揮されてるようで、3か月前に取得しといて正解だったなと思う。

 

『〈マリオネット〉さんマジ強い…使わないと分からないもんだな』


 もし俺が、〈マリオネット〉を解いた場合、狼達に襲われる可能性が目に見えるので、解除という選択肢は無しだ。

 〈マリオネット〉というスキルが強すぎる上に、デメリットが俺が気絶した場合のみ。

 なので、〈マリオネット〉には大変助けられている。

 スキルが掛かれば、チートと言われてもしょうがない。


 俺は、狼達の〈鑑定〉を忘れていたので、どんな能力とスキルなのか確認した。



 【フォレストウルフ】


 種族:魔獣(操り状態)

 レベル:5/50

 体力:250/250

 攻撃力:135

 防御力:120

 魔力:50

 俊敏力:270

 幸運:100

 マナ:50/50


 スキル:〈俊敏アップ〉〈迷彩〉


 

 スキル欄には〈迷彩〉という、隠密特化で狩りや暗殺に有効なスキルがあった。

 不意打ちには持ってこいだが、自分が取得することは、今の所なさそうだ。

 〈憑依〉したら使えるスキルだからだ。


 狼達と狩りをした時、〈迷彩〉を使用していれば、鹿や4つ耳兎を簡単に包囲して狩りができていたのかもしれない。

 魔獣や人種からすると厄介な相手かもが、最初に出会った俺は、運が良かったのかもしれない。

 〈マリオネット〉で捕らえる時に呼び出した狼達は、スキル使用していなかったしな。

 

『俺を装備すれば、不倒の化け物になれる訳だな。攻撃力だけは、装備者頼りだけど…』


 狼のステータスは、自身の本体と比べると大分差あるが、俺を装備すると、その分ステータスがプラス加算されている。

 宝箱を装備してる際は、加算されなかったが、狼の場合は、一種のボスエネミークラスのステータスと考えるのが妥当だろう。


 洞窟にいるボスエネミーを発見した上に、一般的なエネミーのステータスの比較もできた。

 ボスエネミーは、〈鑑定〉していないので想像できないが、狼+俺のステータスを超える敵が現れた時、すなわち死を意味する事になるだろう。

 俺のレベルはまだレベル2だし、成長の余地は大いにある。

 レベル上限があるので、進化もあるだろう。


『此処で俺の成長限界のレベル50近くまで、狼達の力を借りて頑張るか』


 俺は、この階層で頑張ろうと、決意するのだった。







 後日、俺を装備している黒狼だけで、狩りに出掛けた。

 俺本体を装備したまま、黒狼に〈憑依〉を使用せずに本領発揮できるか、〈マリオネット〉に全て任せる。


『〈マリオネット〉だけで、お手並み拝見といこうかな』


 俺を装備した黒狼は、段違いに素早かった。

 エネミーに出会っていないが、1匹と鎧だけで無双できてしまうのではないかと思う。

 〈マリオネット〉で、狼本来の動き以上と化しているので、身を任せることにした。

 まさしく狩りのチュートリアルだな。


 〈マップ探知〉で赤い点滅が近づいてきたので、戦闘を観戦する。

 今回は腕が4本生えている黒い熊だった。

 〈鑑定〉したところ、フォレストベアという名で、この階層の弱肉強食の頂点層は、狼と熊が上位に来ると思う。

 フォレストベアは、レベル10で攻撃力だけ500と高いだけで他は200以下だった。

 

 鎧で防御力が強化された狼は、勝てると判断し、〈迷彩〉状態になる。

 熊の不意を突くように、首元目掛けて噛み付く。

 

 4本腕の熊は狼を引き剥がそう試みるも無駄だった。

 力の限り地面へ押し潰そうとしても、俺を装備している狼は、平気そうに顎を捻じり始め、噛み千切りに掛かる。


 熊はやばいと思ったのか、必死に樹木へと叩きつけ暴れていたが、力及ばず絶命し、光の粒が心臓の部分から出て、俺に吸収される感覚があった。


 終始見てるだけだった俺は、捕食者の目線を体験して、自分ができない行動を観察できて、とても満足した。


『防御力が高過ぎるな。俺を装備しているだけで、他の狼より何倍も防御力が強化されて、樹木に叩きつけられても痛くもない。戦闘を学ぶ上で、今はスキルに任せた方が成長が早そうだな!』


 俺は、この黒狼を頼りに、狩りを続けることにする。

 その前に、レベルも1つ上がった様だ。

 スキルポイントがもらえたので俺は迷わず、スキル取得で〈異空間収納〉を取得して、倒した熊を異空間へ収納する。

 

 その後も俺は、〈マリオネット〉を頼りに狩りを続け、日没になると帰路へ向かうのだった。

 


――それから、1年の歳月が流れる。



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